診療内容
埋伏智歯・過剰埋伏歯の抜歯
智歯(親知らず)は萌出スペースがなく埋没したり、斜めにはえてくることがよくあります。その場合、周囲の歯肉が腫れたり(智歯周囲炎)、むし歯になるため抜歯をする必要が生じます。特に、下顎の埋伏智歯では顎骨内の神経・血管と近接していることが多く、専門的な知識と手技が要求されます。
多くの症例では、局所麻酔下での日帰り手術で対応いたしますが、抜歯に対する恐怖心の強い方や左右一括の抜歯をご希望される場合は、全身麻酔下での入院手術も可能ですので、お気軽にご相談ください。
顎骨嚢胞・腫瘍
顎骨には、歯根嚢胞や含歯性嚢胞などの嚢胞性疾患や、エナメル上皮腫に代表される歯原性良性腫瘍を生じる場合があります。多くは無症状に経過し、ある程度の大きさになると顎部の膨隆をみとめたり、細菌感染により激しい疼痛と顔面の腫脹を伴う場合があります。偶然に歯科用レントゲンで発見されることもあります。これらの病変は発育性に顎骨内で増大しますので外科的に摘出を行う必要があります。
嚢胞摘出術時には手術用顕微鏡支援下での歯根端切除術を応用することで、顎骨嚢胞の原因歯や隣在歯を可能な限り保存するように努めています。前歯、小臼歯のみならず大臼歯への適用も可能です。
口腔粘膜疾患
口の中にもがんが発生することがあります。WHOの分類によれば口腔潜在的悪性疾患(oral potentially malignant disorders)には白板症、紅板症、口腔粘膜下線維症、リバーススモーキングによる口蓋角化症、慢性カンジダ症、扁平苔癬などが含まれます。これらは、専門医による診察と病理組織検査による診断が必要になります。口腔がんへの進展が予想される口腔白板症、紅板症については積極的に切除を計画します。
口腔がんと診断された患者さまは、耳鼻咽喉科・頭頚部外科に治療依頼を行います。
顎変形症
アゴの大きさ、形および位置の異常により、歯のかみ合わせが大きくずれている場合は、顎変形症という病気の可能性があります。うまく噛めない、口が開きにくい、容貌が気になる等でお悩みかもしれません。歯の矯正治療だけでは、安定したかみ合わせが得られない、顎関節症状が改善しない、また整容面の改善が見込めないなどの場合に、歯の矯正治療とアゴの骨に対する外科手術を組み合わせた『外科的矯正治療』により治療が可能になっています。
外科的矯正治療は、近隣の矯正歯科医と口腔外科が連携し、3〜4年かけて治療を行います。当科は外科手術を担当し、7〜10日ほど入院していただきます。正常な口腔機能の回復と審美面にも配慮し、患者さんおよび矯正歯科医とともにより良い治療法を模索し、最良の結果が得られるように努力しています。詳しくは、矯正歯科医もしくは当科でご相談ください。
顎顔面外傷
顎顔面外傷は、皮膚や粘膜などの軟組織の損傷やアゴの骨折や歯の脱落・破折などがあります。アゴの骨折の治療には保存的治療と外科的治療があります。保存的治療は手術を行いませんが、顎間固定(口が開かないように縛る)を行い、しばらく流動食を摂取します。治療期間が長くなる傾向があります。外科的治療は入院手術が必要ですが、基本的には顎間固定は不要で、術翌日から粥食を摂取できます。保存的治療に比べて機能回復が早いです。患者さんの状態やご希望に応じて最良の治療法を選択します。顎顔面外傷の中で難易度の高い下顎骨の関節突起骨折に対しても治療を行なっています。
顎骨壊死
がんの骨転移や多発性骨髄腫、骨粗鬆症の治療のために投与されるビスホスホネートやデノスマブに関連した顎骨壊死(薬剤関連性顎骨壊死)症例が、近年増加傾向にあります。いったん、発症すると難治性であり治療期間が長期に及ぶことも少なくありません。これら薬剤による治療を受けられる際には、かかりつけの歯科医院で検診を受けられ、あらかじめ必要な歯科処置を受けておかれることをお勧めします。
顎骨壊死の治療時には、生活の質(QOL:Quality of life)を維持しながら治癒をめざすべく、最善の治療を計画することを心掛けています。