放射線治療部門
放射線治療は、放射線科治療医、看護師、外来クラーク、放射線技師、医学物理士で行っています。医師は診察を行い、治療方針を決め、その後の診察を行っていきます。看護師は治療期間を通して患者さんに寄り添い、ケアします。放射線技師は治療計画どおり正確に放射線を照射し、かつ治療機器の精度管理を医学物理士と行っています。放射線治療部門は患者さんの病気を克服できるようスタッフが力を合わせて取り組んでいます。
「放射線治療とは?」
放射線は目に見えず、体にあたっても何も感じないものですが、細胞はダメージを受けて徐々に死滅していきます。これを利用して、病巣だけに限局して放射線を当てていき病気を治していこうとするものです。ですので、手術等とは違い傷跡が残るような事は無く、臓器の機能を温存した状態で治療を行うことができます。
放射線治療の進め方
1.診察
放射線治療の専門医が患者さんを診察します。病気の性質や検査結果、患者さんの体の状態をもとに最適な治療方法を決めていきます。この時に治療部位を決定し、与える放射線の量や治療期間などを決定していきます。当院では、迅速な対応を心掛けており、治療方針が決定しましたら早期に治療を開始できるよう努めております。
2.治療計画
患者さん一人ひとりに合わせた治療範囲や放射線のあてる方向等を決めるためにCTを撮影し、治療計画を立てていきます。治療中の体の動きを防ぎ、再現性よく治療を行うために患者さん専用の固定具を作成します。頭頸部を治療される方にはShellというマスク型の固定具を作成します。体幹部を治療される方には、背中やお尻の型に合わせたベッド状の固定具を作成します。実際に治療を受けるときと同じ体位で固定具の作成をし、CTを撮影します。治療部位によっては、MRIを追加することもあります。治療内容によっては、計画に数日を要する事があります。
3.治療開始
放射線治療の照射は、放射線技師が行います。まず、体の位置や姿勢が治療計画のCT撮影時と同じになるように寝ていただきます。次に、照射前に正確な位置を確認するために、X線撮影をします。計画画像との位置照合を行い、病巣や正常組織等のズレを確認・調整し、治療計画と一致した事を確認し、実際の治療を行います。次回以降のために、皮膚にマジック等で印をつけていきます。1回の治療時間は、治療内容によって異なりますが、概ね5分~15分です。初回の治療時のみ、通常より時間がかかります。
4.診察
治療期間中は週1回、終了後も定期的に診察を行って、治療効果の判断や副作用の有無をチェックします。
治療を受ける時の注意点
- 治療開始の初日は、位置合わせのためにどうしても時間が掛かってしまいますので、時間に余裕を持ってお越しください
- 治療は月曜から金曜まで毎日行います。治療時間は、ご予約をお取りして原則同じ時間に行っていきます。ご都合の悪い場合は放射線技師にご相談ください。
- 毎回の治療を正確に行うために体に印を書かせていただきます。この印は治療が終わるまで消さないようにお願いします。
- 放射線治療によって皮膚がかゆくなったり、食欲が無くなったり、吐き気等の副作用がでることがありますが、治療中の一時的なものなので心配いりません。また、何か不安な点があればスタッフにご相談ください。 放射線治療は予定された一定の期間(2~7週間)行わないと効果が表れませんので、途中でやめないようにしてください。
機器紹介
放射線治療装置は、バリアン社製True Beamに更新を行い、2020年6月より稼働再開しています。更新後の装置の特徴を紹介します。
①治療ビームの追加:従来の装置では、治療室の構造上の問題でX線では、1種類のエネルギーしかありませんでしたが、今回は、3種類のエネルギーが使用できるように部屋の遮蔽工事も行いました。これにより、治療部位や体型に合わせたビームの選択が可能になり、多様な治療が行えるようになりました。
②MLC(マルチリーフコリメータ)の精度向上:MLCと呼ばれるコリメータを内蔵しており、MLCを使い様々な照射野を形成して治療を行います。このMLCの幅が、従来の装置では1cm幅だったのですが、今回の装置では最小5mm幅になっており、より細かな照射野を形成することができるため、正常組織をより守ることが可能になりました。
③IMRTの精度向上:IMRT(強度変調放射線治療)は、腫瘍だけに放射線を集中させる高精度な治療方法です。高精度放射線治療であるIMRTは、MLCの精度が向上することにより格段に進歩します。さらに、今回は装置を回転させながらIMRTを行う事が可能になり、1回の治療時間が格段に短くなります。
④IGRTの精度向上:照射前に位置を確認するために行うX線撮影の画質が格段に向上しました。以前は、装置の構造上放射線治療で使用するエネルギーで撮影するしかなかったため、位置合わせに時間を要しましたが、今回は通常のレントゲン撮影と同等のエネルギーを使用可能になったため、鮮明な画像取得が可能になり位置の確認精度が向上します。さらにCT撮影も可能となり、骨だけではなく、臓器の位置ズレを修正して照射することができ、より治療計画に即した治療が可能になります。そして、Exac-TracシステムというIGRT(画像誘導)に特化した付属装置も導入し、X線撮影時に同時2方向撮影が可能となりスループットの向上が期待できます。IGRTで得られたズレ正確に補正できるように治療用寝台は、6軸に動かす事が可能になり、あらゆる角度の補正を行う事ができるため照射精度も格段に向上します。
⑤呼吸同期システムを用いた放射線治療 : 肺、肝臓、膵臓などの腹部領域のように呼吸移動が大きい体幹部放射線治療で有用とされ、今回導入された呼吸同期システムは自由呼吸下で一定の呼吸相のみに照射を行うものであり、腫瘍周囲にある正常組織への線量低減と腫瘍に限局した正確な照射が可能となります。
⑥FFF(フラットニングフィルターフリー)ビームを用いた放射線治療 : 主に体幹部定位放射線治療や呼吸同期照射において、高線量率照射モードであるFFFビームを用いることで、治療時間が短縮され、患者様の負担軽減、治療中の体動軽減等が期待できます。

治療件数の紹介