各診療科・各部門紹介

呼吸器外科

診療内容

2020年の呼吸器外科全身麻酔手術件数は290例で主な疾患の症例数は肺悪性腫瘍手術152例(原発性肺癌120例、転移性肺腫瘍32例)、縦隔腫瘍13例、急性・慢性膿胸15例、気胸60例でした。手術の殆どを胸腔鏡(ロボット手術含)手術で施行します。胸腔鏡手術として単孔式(4cm単一創)胸腔鏡手術やロボット(ダビンチXi)支援胸腔鏡手術、完全胸腔鏡(3ポート)を症例に応じて使い分けています。(トピックスの項参照ください)
主な疾患別治療方針について簡単に記します。詳細に関しては遠慮なくご相談ください。

1. 肺癌;2020年は年間120例の原発性肺癌手術を行いました。
 治療方針は患者さんの意向を踏まえて、組織型・病期を考慮し、呼吸器内科、放射線治療科と連携して適切な治療をお勧めするようにしています。
  ① 手術方法(アプローチ);3か所のポートを用いた完全胸腔鏡下手術が原則ですが、更に低侵襲である単孔式胸腔鏡手術(4cm単一創)やロボット(ダビンチXi)支援胸腔鏡下手術を使い分けています。合併切除を伴う拡大手術に対しては開胸手術を行います。病状の進行度等を踏まえて最も勧められる手術を行います。

         
       図1:単孔式胸腔鏡下肺癌手術

 
 
 
              図2:ロボット支援胸腔鏡下肺癌手術


  ② 早期肺癌:根治性と肺機能の温存の双方を考える必要があります。根治性が十分にある症例では、肺機能を温存するために積極的縮小手術である胸腔鏡下肺区域切除を行っています。これにより術後肺機能は十分に温存できます。その際、区域を特定しにくい場合には術前に該当する気管支に色素を注入して区域を同定する方法(Valmap法;図3)や術中にICG(インドシアニングリーン)色素を用いた同定法(図4)を用いることでより確実に区域切除を行っています。


   

図3:valmap手術による病巣のマーキング
図3:valmap手術による病巣のマーキング
図4:術中ICG使用による肺区域同定
図4:術中ICG使用による肺区域同定

  ③ 進行肺癌:近年の薬物療法の開発に伴い、治療内容は急速に変わってきていますので、個々の患者さんによって勧めるべき治療内容は異なります。我々は呼吸器内科・放射線科と集学的カンファレンスを開催して、個々の症例を検討し、拡大手術や術前化学放射線併用手術も多数行っています。
  ④ 術後補助療法:病理病期IB期以上の肺癌術後補助療法は当科で行います。
  ⑤ 再手術・高齢者手術:80歳以上のご高齢の方の手術や第2肺癌に対する再手術症例は年々増えていますが、85歳以上の方の手術も著明に増加しています。安全性・低侵襲性およびQOL維持を手術基準としていますので、ご高齢の方や再手術の方に対しても手術は十分に安心して受けていただける治療となっています。手術を提案するにあたっては十分な術前検査を行い、ご本人が納得され、またご家族にもご理解頂くようにして手術をお勧めしています。
2. 縦隔腫瘍:2020年の胸腺腫を含む縦隔腫瘍手術は13例でした。大半の症例はロボット支援胸腔鏡手術(図5)を行っていますが、更に患者さんの負担の少ない単孔式胸腔鏡手術(4㎝創のみ)(図6)も施行しており、血管形成を要する開胸による拡大手術も含めてより広い手術選択が可能となっています。重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術もロボット支援下に行っています。

     
             図5:ロボット支援胸腔鏡下拡大胸腺摘出術 
 
              図6:単孔式剣状突起下胸腔鏡縦隔腫瘍手術

 

3. 転移性肺腫瘍;2020年の転移性肺腫瘍に対する手術は32例でした。最近は転移性肺腫瘍に対するに複数回手術も増加していますが、安全に肺機能も温存しながら行っています。
4.感染症手術;慢性有漏性膿胸・急性膿胸に加え、肺・胸囲結核・非結核性抗酸菌症・肺アスペルギルス症といった感染症手術を年間30例程度行っています。近隣病院からの御相談例も積極的に転院の上、治療しています。以前は治療に難渋していた慢性有漏性膿胸に対してはVAC(局所陰圧閉鎖)療法を併用し極めて良好な結果を得ています。
5. 自然気胸は、緊急例含め随時対応しています。近隣病院からの難治性気胸の御相談に対しても早々の転院対応をしています。再発予防目的でブラ切除部への胸膜被覆(ORCシート)術を併せ施行していましたが、最近はPGAシートに変更して再発率の低下を見ています(図7)。若年者の気胸手術の入院期間は通常術後2-3日です。高齢者に対する気胸手術の成績も極めて良好で安心して手術を受けていただけます。
                図7:自然気胸手術(PGA被覆)


6. 気道インターベンション;気管・気管支狭窄症例等に対して硬性気管支鏡や軟性気管支鏡下にシリコンステント、金属ステント挿入術やレーザー、アルゴンプラズマ焼灼術を行っており、呼吸困難などの自覚症状の改善、QOLの改善を図っています。難治性気胸に対する気管支充填術(EWS留置)も行っています。
7.胸部外傷は当院が地域の救急医療も担っていることから対応しています。多発肋骨骨折、外傷性血胸、気胸、肺挫傷などが入院治療の対象になります。大多数は胸腔ドレナージ、保存的治療で軽快しますが、時に緊急手術を行う事もあります。
8. 手掌多汗症;胸腔鏡にて胸部交感神経焼灼術を行っています。術直後から著効し、入院は短期間です。

 

単孔式胸腔鏡手術(uniport VATS)とロボット支援胸腔鏡手術(RATS)について

以前は20-30㎝の側胸部切開による開胸術が一般でしたが、1990年代以後胸腔鏡手術が導入され、3ポートによる胸腔鏡手術により疼痛を大きく軽減することが可能となりました。しかし、それでも我々が現在行っている前向き観察研究では10-20%の患者さんは3か月後に慢性疼痛を自覚されています。

呼吸器外科領域の低侵襲手術は現在新しい時代に入っています。上記の3ポート胸腔鏡手術から単一の創のみで手術を行う単孔式胸腔鏡手術がアジアを中心に広がりを見せています。一方、ロボット支援胸腔鏡手術も北米を中心として広がり、2018年4月から本邦でも保険適応となりました。そのいずれも当科では行っています。

A.単孔式胸腔鏡手術(uniport VATS)

当院における単孔式胸腔鏡手術は2018年2月から縦隔腫瘍に対する剣状突起下アプローチによる単孔式手術に始まりました。これは肋間神経を損傷することのない剣状突起下(みぞおちのあたり)から、基本的には1つのポートを用いて縦隔腫瘍を切除する方法で、術後3日目にはほとんど疼痛が無くなり、多くの患者さんが鎮痛薬不要で退院されています。適応は限られますが非常に優れたアプローチです。

そして2018年12月から肺癌、転移性肺腫瘍に対して一つの創からアプローチする単孔式胸腔鏡下肺葉切除および区域切除を導入しています。術後疼痛が少なく早期退院が可能となっています。安全面では術後死亡はなく、出血などのトラブルによる開胸移行、多孔式胸腔鏡手術への移行はゼロで、術後肺瘻(肺からの空気の漏れ)の停止までの日数も平均で0.47日、中央値0日(0-9日)で、これは全国トップクラスの成績(2021年4月時点)です。兵庫県内では最も早く、また全国的にも早期に導入したことによってすでに安全に行うためのノウハウの蓄積が進んでおり、標準的な手術であれば問題なく単孔式手術を行えるようになっております。(図8)

  図8:アプローチ別の創比較

B.ロボット支援胸腔鏡手術(RATS)

一方、ロボット支援胸腔鏡手術も肺悪性腫瘍(肺癌、転移性肺腫瘍)、縦隔腫瘍に対して保険収載されたのに伴い、当院では2019年2月より開始しています。当初はダビンチSという旧タイプでしたが、2020年1月より最新型機種であるダビンチXiで手術を行っています。ロボット手術は“掃除ロボットのような自動運転手術ではなく、ドローン操作のように”資格を有する術者が行います。当科は3名の術者がロボット手術を行います。ロボット手術も低侵襲胸腔鏡手術ですが、単孔式と趣は異なります。強拡大可能な3D視野により、膜、神経、小血管といった微細構造を確認しつつ、利き腕には無関係に人間の可動域を超えた関節を利用することで、はば広い手術を行うことができます。(図9)当科では肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍に対してRATS手術を行っており、術後合併症は軽微で、良好な術後成績です。縦隔腫瘍に対してはその特性を生かすことができ有効な手術となっています。また肺悪性腫瘍に対しても従来の胸腔鏡を大きく凌駕する視野の充実性により、極めて良い視野で安全に低侵襲に手術が行うことができます。

単孔式とロボット手術は重複する術式が多いため、使い分けは慎重に判断していますが、縦隔腫瘍の場合であれば比較的単純な縦隔腫瘍は単孔式胸腔鏡で、やや複雑な縦隔腫瘍の場合にはロボット手術というように両者を使い分けています。肺癌に関しては病巣部位や想定される術式、難易度により使い分けています。

我々はより良い手術を提供するため、臨床研究を行うことで年々新しい取り組みが行うことで、改良、改善を積み重ねています。御興味のある方は外来担当医に遠慮なくお尋ねください。

                   図9:RATS術中視野

専攻医教育

当科では、多岐にわたる手術~胸部外傷~気管支鏡検査~術後補助化学療法といったボーダー領域を含めた広範囲な呼吸器外科領域治療を行っています。優秀な呼吸器外科医を育成することは我々に与えられた使命でもあります。手術・検査教育、手術トレーニング、学術教育にわたる育成プログラムを持っており、経験豊富な呼吸器外科専門医・指導医による指導を行っています。関心のある方は呼吸器外科部長大政貢(神戸市立西神戸医療センター 078-997-2200)にご連絡いただければ、見学含め対応いたします。

患者さんへ

当科は当院倫理委員会の承認を得た後、多施設共同研究を含む多数の臨床研究を行っています。呼吸器外科手術臨床データ利用のお願いこちら(PDFファイル)をご覧ください。

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