各診療科・各部門紹介

呼吸器外科

診療内容

2021年の呼吸器外科全身麻酔手術件数は314例でした。主な疾患の症例数は肺悪性腫瘍手術134例(原発性肺癌115例、転移性肺腫瘍19例)、縦隔腫瘍25例、急性・慢性膿胸37例、気胸63例でした。手術の殆どは胸腔鏡(ロボット手術含)手術ですが、進行癌等には開胸による拡大手術も積極的に行います。胸腔鏡手術として単孔式(4cm単一創)胸腔鏡手術やロボット(ダビンチXi)支援胸腔鏡手術、完全胸腔鏡(3ポート)を症例に応じて使い分けています。(トピックスの項参照ください)
主な疾患別治療方針について簡単に記します。詳細に関しては遠慮なくご相談ください。

1. 肺癌

治療方針は患者さんの意向を踏まえて、組織型・病期・病状を考慮し、呼吸器内科、放射線治療科と連携して適切な治療をお勧めするようにしています。

①手術方法(アプローチ);3か所のポートを用いた完全胸腔鏡下手術が原則ですが、更に低侵襲である単孔式胸腔鏡手術(4cm単一創)やロボット(ダビンチXi)支援胸腔鏡下手術を使い分けています。合併切除を伴う拡大手術に対しては開胸手術を行います。病状の進行度等を踏まえて最も勧められる手術を行います。

図1:単孔式胸腔鏡下肺癌手術
図2:ロボット支援胸腔鏡下肺癌手術

 

②早期肺癌:根治性と肺機能の温存の双方を考える必要があります。根治性が十分にある症例では、肺機能を温存するために積極的縮小手術である胸腔鏡下肺区域切除を行っています。これにより術後肺機能は十分に温存できます。その際、区域を特定しにくい場合には術前に該当する気管支に色素を注入して区域を同定する方法(Valmap法;図3)や術中にICG(インドシアニングリーン)色素を用いた同定法(図4)を用いることでより確実に区域切除を行っています。

図3:valmap手術による病巣のマーキング
図4:術中ICG使用による肺区域同定
③進行肺癌:近年の薬物療法の開発に伴い、治療内容は急速に変わってきていますので、個々の患者さんによって勧めるべき治療内容は異なります。我々は呼吸器内科・放射線治療科と集学的カンファレンスを開催して、個々の症例を検討し、拡大手術や術前化学放射線併用手術も多数行っています。

④術後補助療法:病理病期IB期以上の肺癌術後補助療法は当科で行います。

⑤再手術・高齢者手術:80歳以上のご高齢の方の手術や第2肺癌に対する再手術症例は年々増えていますが、85歳以上の方の手術も著明に増加しています。安全性・低侵襲性および術後の生活レベル維持を手術基準としていますので、ご高齢の方や再手術の方に対しても手術は十分に安心して受けていただける治療となっています。手術を提案するにあたっては十分な術前検査を行い、ご本人が納得され、またご家族にもご理解頂くようにして手術をお勧めしています。

2. 縦隔腫瘍

大半の症例はロボット支援胸腔鏡手術(図5)を行っていますが、更に患者さんの負担の少ない単孔式胸腔鏡手術(4㎝創1カ所のみ)(図6)も施行しており、血管形成を要する開胸による拡大手術も含めてより広い手術選択が可能となっています。重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術もロボット支援下に行っています。

                  
図5:ロボット支援胸腔鏡下拡大胸腺摘出術

                   
図6:単孔式剣状突起下胸腔鏡縦隔腫瘍手術

 

3. 転移性肺腫瘍

最近は大腸癌や腎癌の肺転移などの転移性肺腫瘍に対するに複数回手術も増加していますが、区域切除も積極的に行い、安全に肺機能も温存しながら行っています。


4.感染症手術

慢性有漏性膿胸・急性膿胸に加え、肺・胸囲結核・非結核性抗酸菌症・肺アスペルギルス症といった感染症手術を年間40例程度行っています。近隣病院からの御相談例も積極的に転院の上、治療しています。以前は治療に難渋していた慢性有漏性膿胸に対してはVAC(局所陰圧閉鎖)療法を併用し極めて良好な結果を得ています。


5. 自然気胸

緊急例含め随時対応しています。近隣病院からの難治性気胸の御相談に対しても早々の転院対応をしています。再発予防目的でブラ切除部への胸膜被覆(ORC(酸化セルロール)シート)術を併せ施行していましたが、最近はPGA(ポリグリコール酸)シートに変更して明かな再発率の低下を見ています(図7)。若年者の気胸手術の入院期間は通常術後2-3日です。高齢者に対する気胸手術の成績も極めて良好で安心して手術を受けていただけます。

図7:自然気胸手術(PGA被覆)



6. 気道インターベンション

気管・気管支狭窄症例等に対して硬性気管支鏡や軟性気管支鏡下にシリコンステント、金属ステント挿入術やレーザー、アルゴンプラズマ焼灼術を行っており、呼吸困難などの自覚症状の改善、QOLの改善を図っています。難治性気胸に対する気管支充填術(EWS留置)も行っています。

7.胸部外傷

当院が地域の救急医療も担っていることから対応しています。多発肋骨骨折、外傷性血胸、気胸、肺挫傷などが入院治療の対象になります。大多数は胸腔ドレナージ、保存的治療で軽快しますが、時に緊急手術を行う事もあります。

8.手掌多汗症

胸腔鏡にて胸部交感神経焼灼術を行っています。術直後から著効し、入院は短期間(2泊3日)です。

 

専攻医教育

当科では、多岐にわたる手術~胸部外傷~気管支鏡検査~術後補助化学療法といったボーダー領域を含めた広範囲な呼吸器外科領域治療を行っています。優秀な呼吸器外科医を育成することは我々に与えられた使命でもあります。手術・検査教育、手術トレーニング、学術教育にわたる育成プログラムを持っており、経験豊富な呼吸器外科専門医・指導医による指導を行っています。関心のある方は呼吸器外科部長大政貢(神戸市立西神戸医療センター 078-997-2200)にご連絡いただければ、見学含め対応いたします。

患者さんへ

当科は当院倫理委員会の承認を得た後、多施設共同研究を含む多数の臨床研究を行っています。呼吸器外科手術臨床データ利用のお願いこちら(PDFファイル)をご覧ください。

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