にしこうべvol.2カバー画像 産婦人科集合写真
にしこうべ vol.02
2013年02月

安全な出産を支える総合力とQOLを意識した手術に定評
《女性の生涯に寄り添うオーダーメイド診療》

西神戸医療センターの産婦人科は、一次診療から高度専門医療にまで対応できる体制を整え、総合病院の特徴を生かした医療の提供を目指しています。
 女性ドクターが多いのも特徴で、少女から思春期を経て大人の女性へ、妻へ、そして母へと移り変わっていく女性の生涯に寄り添いながら、思春期医療、周産期医療、更年期医療など、さまざまな悩みに応える診療を心がけています。また、腹腔鏡手術で県内トップクラスの件数を誇るなど、QOLを意識したオペでも高い実績があります。

(お話は、産婦人科部長 竹内康人医師)

女性らしい優しさと頼もしさを兼ね備えた医師がズラリ

Q:産婦人科は、外来、入院ともに患者数の多い科だそうですね。

産婦人科部長 竹内康人医師竹内:外来患者数では常に上位3位内に入っており、入院でも呼吸器内科に次いで2番目に患者数の多い科です。以前は、産婦人科は周産期系と腫瘍系の2部門に分かれていましたが、現在は不妊症や更年期障害といった内分泌系と、尿失禁などのウィメンズヘルスケアの2部門を加えた4部門で、患者さんのさまざまな悩みに、“オーダーメイド”のような治療をご提供できるよう努めています。
医師は片山院長を筆頭に20歳代から60歳代まで11名(後期研修医の3名を含む)が在籍しており、うち8名が日本産科婦人科学会の専門医、7名が母体保護法指定医の資格を保有するなど、地域住民の皆さんの信頼に応えられる医療を提供できる体制を整えています。さらに、NCPR(新生児蘇生法)講習会の実施に力を入れており、2013年3月末までには産婦人科に関係のある医師、看護師、助産師の全員が資格取得を果たす見込みです。私たちが予備能力の弱い新生児の命を救う能力を磨くことで、より安心して出産に臨んでいただければと願っています。

総合病院だから合併症や帝王切開にも対応できる

Q:周産期医療に関して、他の病院にはない特徴はありますか?

当院で出産された方へ、新しいご家族の誕生を祝福して「お祝い膳」をご用意しております。(写真は洋食の一例)竹内:23年度は、開院以来最高となる935件の分娩に立ち合わせていただきました。出産というのは非常におめでたいことですし、安全に生まれて当たり前と思われがちですが、妊婦さんにとっては突然やってくるリスクとも言えます。とくに近年増えている35歳以上の高年初産は、母体にとっても胎児にとっても様々なリスクが高くなりますが、当院は総合病院ということで、妊娠30週以上・1500g以上の新生児を担当してくれる小児科、糖尿病などの合併症や妊娠高血圧症に対応できる内科、帝王切開手術に24時間対応できる麻酔科と連携をとりながら、より安心安全な出産をサポートしています。40歳以上の初産婦さんも月3、4人ほどに増えてきました。“ラストチャンス”と思い入れの強い出産を無事に終えて退院される時は、私たちも嬉しい気持ちでいっぱいになります。

術式や治療方針をオーダーメイド感覚で選択

Q:悪性腫瘍治療などオペに定評があり、片山院長は腹腔鏡手術のスペシャリストとうかがいました。

竹内:悪性腫瘍に関しては、毎年50~70人の新しい患者さんが初診でこられます。手術前の病理検査や画像診断をもとに、放射線治療や化学療法などを組み合わせて最適な治療法を選んでいき、手術が必要になった場合は、腫瘍を完璧に取り除きつつ、傷口の大きさや痛みなど最小限に抑えられるよう、術式についても検討を重ねます。院長の片山は、腹部にメスを入れず膣側からアプローチしていくオペを得意としており、当科全体で年間300件程度の腹腔鏡手術を実施しています。

Q:入院時のクリニカルパスに積極的に取り組んでおられるそうですね。

竹内:病院全体としてクリニカルパス(診療スケジュール表)の導入を進めており、産婦人科では8割以上の患者さんが対象です。診療内容やスケジュールを標準化することは、医療プロセスの見落としを防ぐことができますし、入院期間の短縮にもつながります。 一方、外来診療においても、初診を担当した医師の判断だけに頼るのではなく、他の医師とその場で相談したり、手術前のカンファレンスで意見交換を行ったりしています。いわば、院内だけで「セカンドオピニオン」や「サードオピニオン」をご提供しているようなもので、患者さんの選択肢を増やすことにつながればと考えています。

ガン予防や更年期の悩みも気軽に相談を

Q:ここ数年、産婦人科で増えている症例など、何か傾向があれば教えてください。

竹内:予防できるガンとして、子宮頸がんに対する関心が高まってきました。テレビ番組などメディアで紹介される機会が増えたこともありますが、中学3年生もしくは高校1年生の女性を対象に国費負担で無料の予防接種が行われるようになった影響が大きいようですね。予防接種は小児科の担当ですが、高校生以上の女性で希望があれば婦人科で対応しています(有料)。  今も昔も、産婦人科で診療を受けることに対して抵抗を覚える方は多いですが、行政から配布される無料診察券をきっかけに、子宮がんの検診に来られる患者さんも増えており、中には50歳を過ぎて初めて産婦人科で受診されるという方も。当センターは更年期外来や思春期外来にも力を入れていますし、若い独身の女医もいれば、ベテランのママさんドクターもおりますので、「あの先生なら話しやすいかしら?」という医師をみつけて、門をくぐってくださる方が増えればありがたいですね。実際、神戸市内のみならず、姫路や豊岡など遠方から通ってくださる患者さんも珍しくありません。

Q:最後に、今後の目標やご計画についてお聞かせください。

竹内:手術室を2室増設して救急診療への対応力を強化します。たとえば、出産後に大量出血がある場合でも、放射線科と連携して子宮につながる血管を一時的に詰める緊急オペができれば、子宮を温存できる場合もあるんですよ。また、いかなる緊急事態に対しても慌てず、患者さんの体を移動するような力仕事も危なげなくこなす女医たちを見ていると、私より精神力も体力も上だなぁと、部下ながら頼もしく感じることがしばしばです。
当センターは、地域の中核病院としての責任もありますから、他の病院から移送されてきた患者さんに対しても、同じように最適最善の治療を提供していかねばなりません。周辺地域の医療従事者の皆さんとも日頃から“顔の見えるお付き合い”をして、神戸西エリアに住んでいれば安心して子どもが産めると言っていただけるような環境を整えていきたいと思います。

ありがとうございました。

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