にしこうべ vol.19
2018年12月

子どもは日本の未来! 使命感と誇りを持って小児医療に取り組む
《連日17時~24時の救急診療が実現》

神戸市立西神戸医療センターの小児科では、救急医療を積極的に行っています。平成30年6月からは、連日17時~24時までの救急受け入れを開始し、土曜日17時~翌朝9時までの二次輪番を担当しています。未来を担う子どもたちと家族を守る小児科医の皆さんにお話を伺いました。

(お話は、小児科の松原部長、岩田医長、堀副医長、磯目副医長、川﨑副医長、内藤医師、金医師、竹本専攻医、合田専攻医)

総勢11名の小児科医が交替で救急外来に対応

Q:神戸西地域における小児医療の現状と、時間外の救急受け入れに至った経緯を教えてください

松原部長

松原:少子化によって14歳以下の小児人口が減少していますが、実はそれ以前に、全国の小児科入院施設が減ってきています。神戸市では、平成28年5月に須磨区にあった兵庫県立こども病院が、ポートアイランドに移転しました。平成30年4月には、垂水区にある2施設の小児科で入院ができなくなり、中央区にある1施設の小児科が閉鎖されました。これらに伴い、当院の小児科に責任が加重され、医療圏がより広範囲になってきたのです。実際、この5年間で、西区はもちろん、須磨区、垂水区、明石市、三木市からの患者さんが飛躍的に増加しており、成人を含めて人口約70万人の医療圏をカバーしなければならないのが現状です。
また、少子化で子どもの数が減少する一方で小児病棟への入院数は増えており、地域医療を支えるには、子ども達を守らなければならないが、小児科医も守らなければならないという2つの使命を抱えてジレンマに陥っていました。このため、長らく小児救急診療の拡大と縮小を繰り返してきましたが、ようやく陣容を整えることができ、これまで金曜日には行っていなかった救急診療を6月から再開し、連日17時~24時の救急受け入れが可能になりました。現在、11名の小児科医と1名の非常勤医師がおり、皆さんとてもよく働いてくれているのでありがたく思っています。

川﨑:金曜日の救急外来を始めたからといって、医師一人当たりの負担が増えたわけではありません。子どもの救急医療専門の先生をはじめ、小児科医を増やしてもらってスタートしたので、特に変動は感じていません。

磯目:むしろ、連日対応になったことで、メリットのほうが大きいと感じています。たとえば金曜日の一般外来で、心配な症状のお子さんを診察しておうちに帰していたのが、「何かあれば、24時までに来てください」と言えるようになったので、患者さんや親御さんはもちろん、私たち医師にとっても不安が軽減されました。

Q:夜間の救急には、どういった患者さんが多いのでしょうか? 受診を判断するタイミングは?

堀:ほとんどが発熱ですね。感染症を伴う発熱の場合が多いです。それから、おなかが痛いなどの症状。ときどき、タバコや電池を誤飲してしまう事故もあります。

岩田:救急を受診するか、翌朝の一般外来まで様子をみるかの判断は、お子さんの年齢やお母さんの子育て経験等にもよるので、一概には言えませんね。

磯目副医長

堀:小学生以降のお子さんの急な発熱の場合は、翌朝の受診でも大抵は大丈夫です。親御さんから見て症状がおもわしくなく朝まで待てないという場合は、もちろん救急に来ていただいて構いません。

磯目:基本的には3日以上発熱が続けば、日中に受診してください。そのほうが詳しい検査ができます。乳幼児の場合、急な発熱や心配な症状があれば、24時までに来ていただければ対応します。現時点では、深夜0時~朝9時までの診察は受付けていないので、地域の方は24時に間に合うように判断して来られることが多いようです。

松原:ちなみに統計では、親御さんのご判断で救急受診された患者さんのうち、入院が必要な方は3~4%で、実際には緊急を要する患者さんは少ないです。

ハイリスク分娩の増加に伴い、周産期医療にも注力

Q:小児科の診療対象は、胎児から中学生くらいまでとお聞きしました

松原:はい、周産期医療にも力を入れています。妊娠32週以降を目安に母体搬送を受け入れていますので、産科との緊密な連携によって、胎児や新生児の治療にあたっています。当院には、地域の医療機関から紹介されたハイリスク分娩の方が多く来られます。このため、当院で生まれた赤ちゃんの約3分の1が入院のうえ加療が必要になります。

磯目:ハイリスク分娩は増加していて、なかでも人工呼吸器装着になる症例が急増しています。当科には新生児蘇生インストラクターが3人いることもあり、他院の倍くらいの症例があるのではないでしょうか。

岩田:私は未熟児の発達フォローをしていたのですが、3歳くらいになって障害が見つかるケースもあるため、そういう子たちとは長くお付き合いしています。また、てんかんなどで小さいときから診ている患者さんは、中学生・高校生になっても継続して担当しています。

食物アレルギー、花粉症の最新治療を実施

Q:先生方の専門性を生かした特殊外来も行っているそうですね

松原:小児科医は専門分野を担当する医師がそろっていて、曜日ごとに、アレルギー外来、乳児健診、小児神経外来、未熟児外来、心臓外来などの特殊外来を午後に行っています。とくに、食物アレルギーの経口負荷試験に力を入れており、年間200例程度実施しています。

内藤医師

堀:私はアレルギーが専門ですが、この10年で治療法が大きく変わっています。食物アレルギーでは、これまで除去していたものを「食べて治す」が主流になっています。花粉症も、その時期になれば服薬で症状を抑える対症療法が主流でしたが、現在は、アレルギーの原因物質を少しずつ取り入れて体を徐々に慣らしていき、花粉症そのものを治そうとする舌下免疫療法が注目されています。以前は12歳以上が治療の対象でしたが、今年の春から5歳以上が対象になり、患者さんが増えています。お子さんのアレルギーでお悩みの方は、症状が悪化する前に早めにご相談ください。

松原:小児救急、周産期医療、食物アレルギーに加えて、当院のもう一つの特徴は、若い小児科医を育てる教育制度です。平成29年度から開始された新専門医制度において、全国に約70施設しかない総合病院基幹研修施設の一つに認定されています。

合田:私は、その専門医研修プログラムに登録・研修中の「専攻医」で、10月に着任したばかりです。まだわからないことだらけですが、先生方は何でも質問しやすい雰囲気を作ってくださっているので、とてもありがたいです。

竹本:私も専攻医2年目です。小児科医は非常に幅広い分野の基礎を学ぶ必要があるので、ベースとなる医療全般を学びながら日々の診療にあたっているところです。

金:私は春までレジデントで、今年度からこちらでお世話になっています。以前の病院では、救急外来や急性期の患者さんを診ることが多かったのですが、今は一般外来や乳児健診、経口負荷試験など、いろいろな経験をさせてもらっています。

内藤:私は小児科医としては5年目で、当院には昨年度から勤務しています。大規模病院からこちらに来たこともあって、当院小児科は上級医の先生方との距離が近く、上下間のコミュニケーションがとりやすい環境が整っていると思います。各分野の専門の先生がいて、いつでも快く相談に乗っていただける点にも働きやすさを感じています。

川﨑:この春から陣容が分厚くなり、若手の先生が増えたことで、教わる立場から教える立場に変わりました。今後は関心がある腎疾患について学びたいと考えていますが、自分の勉強だけでなく、後輩に教えるための勉強もしていかなければいけないと思っています。

松原:皆さんがおっしゃるように、部署内の風通しは良いと思います。先生方がそれぞれ何を見ているかお互いに把握しているので、チーム医療としてもうまく機能しています。私たちは小児医療に誇りを持ち、なおかつ仲良く診療していますので、安心して受診してください。
子どもは日本の未来であり、宝です。できる限りいつでも来てもらえるように、今後も診療を拡大する努力をしていきたいと思います。

―ありがとうございました。

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