にしこうべ vol.20
2019年03月

手術前から予防的リハビリを積極的に実施し、早期離床を促進
地域連携でリハビリに相乗効果も
《患者さんの早期離床を目指して》

リハビリテーションセンターでは、理学療法・作業療法・言語聴覚療法の3部門を設置し、患者さんの機能回復をサポートしています。
急性期病院、二次救急病院としての役割を担う西神戸医療センターで、患者さんの早期離床を目指して日々奮闘する皆さんにお話を伺いました。

(お話は、リハビリテーション科部長代行・脳神経外科の西原賢在医長、リハビリテーション技術部技師長代行の田中利明理学療法士、秋武浩太作業療法士、白井裕美子言語聴覚士)

増加する「がんリハビリテーション」のニーズに対応

Q:近年、増えている症例や新たな取り組みはありますか?

西原:ここ数年、チーム医療を推進する中で問題になっているのが、がん患者さんの骨転移ですね。がんリハビリテーションで身体を動かして初めて痛みに気付き、検査してみると、がんが骨に転移していることがあります。そこで、整形外科の先生に依頼して骨メタ(骨転移)回診を行い、骨転移の早期発見に努めると同時に、骨折のリスク軽減に取り組んでいます。また、骨転移によって行動制限がある患者さんに対しては、痛みを管理して少しでもリハビリができるようにサポートしています。

田中:私たち理学療法士は平成30年度から10名体制になり、徐々に各病棟に担当スタッフを配置できるようになってきました。おかげで、病棟とこれまで以上に密に連携を取る事が可能になり、スタッフも各自の専門性を高めることができればと考えています。

秋武:私は以前、地域の方に向けて、乳腺外科の医師や看護師と一緒に乳がんの講演会をしたことがあるのですが、当時は乳がんのリハビリを今ほど積極的に行えていませんでした。受講者から「そういったリハビリがあるのなら、もっとやって欲しい」という声が寄せられたのを機に、講演会のメンバーでチームを組み、強化を行いました。
その結果、乳がんの手術後、胸周囲の痛みや肩関節の運動障害を起こしていた患者さんが、リハビリによって症状が改善したり、手術前からリハビリに取り組むことで術後のQOL(生活の質)が向上したりしています。これらについては、兵庫県の乳線疾患研究会や作業療法士の学会で発表しました。

西原:リハビリテーションセンターでは、おもに骨折や脳卒中などによって身体に障害がある方を対象として、障害の軽減と予防、日常生活動作の機能改善を行っていますが、当院が国から「地域がん診療連携拠点病院」に指定されたことによって、各診療科が高度な手術を行うようになり、がんリハビリテーションのニーズも高まっています。
例えば、前立腺がんの術後に排尿障害が起きることがありますが、事前に予想されるケースでは、術前から積極的にリハビリが介入することで予防につながっています。

白井:言語聴覚士が担当する患者さんの1/4は、嚥下障害の方です。高齢者や認知症の方は、元々むせやすい方が多く、入院後の絶食をきっかけに食べられなくなることは珍しくありません。食道がんや喉頭がんの術後に、嚥下障害となることもあります。もし、誤嚥性肺炎になると離床が進まなくなり、体力がおちていくので、一日も早く安全に食事をしてもらうことが重要です。
一方、外来では、耳鼻いんこう科や小児科に来られる患者さんの難聴・言語発達・音声・発音・吃音に関するご相談が増えています。保護者がお子さんの発達を早くから心配して受診されるようで、少子化が進んでいる割にはニーズの増加を実感しています。音声のリハビリは、他にやっている施設が少ないため、遠方からも通院されています。

患者さんが興味のあることを入口に、楽しくリハビリを

Q:リハビリに消極的な患者さんには、どのような対応をしていますか?

秋武:リハビリと聞くと、頑張らなければいけない、しんどい、痛いといったイメージを持つ方が多いかもしれません。私たちは、患者さんの趣味やできることを入口にして、やってみようかなと思ってもらえることを見つけるよう努めています。患者さんが楽しいと思えることを交えて、モチベーションを上げてもらうようなプログラムを考えています。

白井:失語症のリハビリでは、ご家族から情報をいただいて、患者さんが話したいことを話してもらうようにしています。ずっと病室にいると自発性が低下していきます。毎日リハビリ室を覗きに来るところから始めて、患者さんのペースに合わせて少しずつ頑張ってもらえたらと思っています。

西原:がんリハビリテーションでは、鬱状態でリハビリをやる気力が湧かない方もおられます。その場合は、患者さんのお話を聞くだけでも構わないと思います。精神科の先生との橋渡しをすることもリハビリの役割です。反対に、昔のように歌を歌いたい、ギターを弾けるようになりたいなどの目標がある方もいて、リハビリ室で歌やギターを練習されている姿も見かけます。

秋武:手術前に予防的リハビリを始めることで、患者さんの病気に対する知識が深まり、何のためにこの運動をするのかを理解していただけます。すると、術後の早い時期から患者さん自身でリハビリに取り組んでもらえ、リハビリがスムーズにいくなどの効果を発揮しています。

田中:理学療法士としては、できるだけ早期にベッドから離床してもらうことが介入目的の一つと考えています。それが結果的に合併症予防にもつながるからです。手術前からリハビリを介入し患者さんと信頼関係を築く事で、術後に初めてお会いするケースと比べて、安心してリハビリを受けてくださるように感じます。

西原:昨年からは、集中治療室でのリハビリも始まっています。筋力を落とさないように、歩いて病室に戻れるように、急性期から積極的にリハビリに取り組むことが有用だということがわかり、早期離床・リハビリテーション加算が付くようにもなりました。

施設間の垣根を越えた地域連携ネットワークWKCC

Q:リハビリに特化した地域連携ネットワークを組織されているそうですね。

田中:WKCC(West Kobe Community Cooperation)は、当院のセラピストが中心となって平成26年3月に発足しました。医療、介護サービスの質を高めるために作った、神戸西地域の施設間の垣根を越えたネットワークです。定期的に集まって症例報告会やオープンカンファレンスを行い、情報交換、意見交換することで互いのスキルアップを図っています。多い時には、200名ほど集まることもあります。

西原:例えば、脳内出血で高次脳機能障害と片麻痺が出たAさんは、急性期の治療はこうだった。当院でのリハビリでは、こういうことができるようになった。回復期のリハビリ施設では、これができるようになった。ご自宅ではこういうことで困っている…と、時系列で症例を検証することで、「初期の段階でこういうことはできませんか?」「こんな風にしてはどうでしょう?」という意見を現場にフィードバックでき、全体のレベルアップにつながっています。

秋武:地域の先生方から、急性期病院や回復期病院でセラピストがつきっきりでリハビリを行うと、運動に対して受け身となってしまう患者さんもおられ、生活期に入ると、訪問リハビリを週に1~2回しか受けられないので、急性期、回復期からもっと自主的に頑張れるような関係性を築いてもらいたいというご指摘をいただいたこともあります。早速、ご意見を参考に、自分で頑張ってもらえるような自主トレのプログラムを考えて、患者さんが依存的にならないようにサポートしています。

西原:治療医からすれば、緊急手術で一命をとりとめて大きな後遺症が残った方が、ここまで良くなるんだというだけで感慨深いものがあります。しかし、そこで胸をなでおろすだけでなく、患者さんのご自宅での生活をイメージして、早期にリハビリ介入できるようになったのは、大変いいことだと思います。地域との連携があるからこそ、気付けることも少なくありません。

Q:リハビリを必要とする患者さんにメッセージをお願いします。

西原:リハビリテーションは患者さんの生活に直結する部分なので、スタッフはやりがいを持って皆さんをサポートしています。こんなことができるようになりたいという希望を伝えてくだされば、全力でお手伝いします。

白井:食べることと話すことは、生きていくのに欠かせない機能です。入院して生活が一変しても毎日食べたり話す必要はあります。もし、リハビリが順調にいかなくても焦らないでください。食べ方や介助方法を工夫して、安全に食べていただけるよう考えます。嚥下食や経管栄養もいろいろあります。代替コミュニケーションツールもご紹介できます。その人がその人らしくいられるように、患者さんの思いを尊重しながらサポートさせていただきます。

秋武:今は便利な福祉用具もたくさんあります。患者さんの保有能力に合わせて環境を整えれば、日常生活を送ることができるので、一人ひとりに合ったものをアドバイスしています。

田中:やさしいスタッフばかりですので、安心してリハビリに取り組んでください。地域の医療機関とも密な連携を取っていきます。

―ありがとうございました。

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