西神戸医療センターだより

現在、6名の管理栄養士を中心に約60名(委託事業者含む)が所属している西神戸医療センターの栄養管理室。「給食管理」と「栄養管理」という2つの業務を両輪としてまわし、入院患者さんの日々の食事管理はもちろん、患者さんの疾患や病態に応じた個別栄養相談、地域の方に向けての集団指導教室など、幅広い取り組みを続けています。
また、「食べることは、病気にも元気にもつながる」ことから、安心安全への配慮、栄養の充実に加えて、行事食やお祝い膳の実施、盛り付けの工夫といった“食の愉しみ”の演出にも力を入れています。
(お話は、栄養管理室・三浦陽子室長、中林瑞保管理栄養士、尾鼻俊弥管理栄養士、島村康弘管理栄養士)

 

 

患者さんの状態に応じた個別対応食を目指して

Q:西神戸医療センターの給食は、とても種類が多いそうですね。

v11_img1三浦:現在、「一般食」と「特別治療食」とを合わせて、86種類もの食種で1日3食、365日、様々な疾病に、日々きめ細やかな対応をしています。
一般食の標準的な形は「基本食」です。おかずやご飯の硬さを軟らかくした「軟食」も基本食のバリエーションです。ほかに、「嚥下食」を4段階用意しています。健康な方は「水分なら簡単に飲めるのでは?」とお考えかもしれませんが、実は、むせやすくて飲みこみにくいのです。そこで、とろみ食やゼリーなども採り入れながら、量も控えめにして提供するようにしています。v11_img2その後、ペースト食などを経て、3分粥食などへ移行できるようにしていきます。

島村:たとえば、高齢者に増えている誤嚥性肺炎などで緊急入院された方の場合、絶食状態から始まりますから、回復状態に合わせて無理なく基本食に戻していくことを目指します。食材の形がわかる「食事らしい食事」を召し上がれるようになることで、「元気になった!」と自信をつけながら、食事療法に取り組まれる患者さんも多いですよ。

 

Q:一方の「特別治療食」には、どのような工夫があるのでしょうか?

三浦:「特別治療食」は、エネルギー(カロリー)や塩分などの量をコントロールした食事です。かつては多くの病院で「糖尿病食」など病名を冠した食種(食事の種類)名を付けることが多かったのですが、一人の患者さんが複数の病気を併発されていることもありますし、違う病名でも各個人の必要栄養量を計算すると同じ栄養量の食事が使えることも多く、アルファベット名称で区別した食種を設定し、個々の病態に応じた食事が提供できるようにしています。

産科・お祝い膳・フルーツ盛り

産科・お祝い膳・フルーツ盛り

また、産婦人科では、鉄分などの摂取に配慮することはもちろん、「妊娠糖尿病」や「妊娠高血圧症候群」をはじめとする様々な状況に見合った食種での対応が可能です。また出産時には、フルーツの盛り合わせやお頭付きの魚などを並べた「お祝い膳」を用意して、新しい命の誕生を一緒にお祝いします。
「食事療法」と聞くと、カロリーや塩分の制限が真っ先に思い浮かぶかと思いますが、たんぱく質や脂質のコントロールが欠かせない疾患もありますし、潰瘍性大腸炎やクローン病などの方のお食事には食物繊維量や脂質などを抑えることもあります。患者さんの状態や生活習慣などは、適切な食種や献立を決めるうえで重要な情報ですね。

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季節感や手作り感で愉しさを演出

Q:中核病院である西神戸医療センターの規模で、86食種も作るのは大変なのでは?

三浦:たしかに、475床、28診療科目で、平均約11日在院される患者さんに、「個人の好き嫌い」にまで配慮するご家庭のような対応をするのは難しいですね。けれど、当院が心がけている「安心・安全」な食事提供を実現するためにも、限られた時間や条件の中で、出来る範囲の個別対応を充実させていくつもりです。 患者さんの高齢化やアレルギーの増加などの影響もあり、個別対応率は年々増えて約40%にも達しています。
これら給食管理業務は委託事業者と密接に連携して行っており、定期的に残食調査や患者さんへのアンケートを実施し、献立会議に反映させています。

v11_img4中林:年間500種類もの食材を使っていますが、できるだけ国産にこだわって選んでいます。毎年春に一年分の仕入れ計画を立て、まとまった量の購入を約束することで、材料費を抑えるようにしています。また、ひな祭りの時期にちらし寿司を作るなど、月1回程度の「行事食」も提供して、季節感や食事の楽しさを感じてもらえるようにしています。日ごろからおいしそうに彩りよく盛り付けることはもちろんですが、野菜とお肉を別々にせずに一緒に盛り込むことで残食を減らすような工夫もしています。皆さん驚かれるのですが、ハンバーグ、ロールキャベツ、海老フライや、ひろうす、みそ漬の焼魚といったメニューも当院手作りなんですよ!

院内食のメニュー例

 

他の専門職からの意見も食事に反映させる

Q:栄養管理業務では、どのような取り組みをされているのですか?

三浦:まず、入院患者さんのほぼ全員に「栄養管理計画書」を作成しています。さらに、入院・外来を問わず、必要に応じて個別栄養指導で様々な疾病に対応し、各種「教室」の形で集団栄養指導に当たることもしばしばです。
また、チーム医療8チームの中の5チーム「NST(栄養サポートチーム)、緩和ケアチーム、褥瘡対策ケアチーム、精神科リエゾンチーム、糖尿病療養指導支援チーム」に管理栄養士が参加しています。

v11_img5尾鼻:たとえばNSTでは、週4回の回診を行っています。チームには管理栄養士のほかに、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、言語聴覚士、理学療法士、臨床検査技師、臨床工学技士、歯科衛生士も参加。摂食・嚥下障害のある患者さんでは、どの程度まで嚥下できるかを言語聴覚士の判断をもとにして給食を変更したり、筋肉など全身の状態は理学療法士からの情報を参考にして、どんな栄養がどのくらい必要かを決めたりと、多職種の英知を集めて栄養管理をしています。
また、個別栄養相談では、患者さんや患者さんのご家族と日常生活や食事療法などについてお話しする時間を持ちます。限られた時間の中で、いかに多くの情報をヒアリングできるかが肝心。「料理が苦手」と悩む方の気持ちや、「控えなければと思うけど食べてしまう」という方の葛藤に共感を覚えることも…。そうやって、患者さんのお気持ちに寄り添いながらも、栄養指導のプロとして「ご自身の将来のために頑張りましょう」と時には励ましたり、ご家族と一緒に良い習慣を続ける工夫を考えていくよう促したりしています。

三浦:患者さん個々のライフスタイルを大きく変えることなく、より正しい食習慣へと近づけていけるようなアドバイスができれば理想的ですね。たとえば、お仕事を持っておられる妊婦さんから「週末にまとめ買いをする」という話をうかがったら、余計なものを買い過ぎないよう注意する一方で、カット野菜などを利用して手間をかけずに必要な栄養素を摂る方法を提案してみるといった具合です。また、赤ちゃんの離乳食について集団指導をするときに、「噛む」ことの大切さを正しくお伝えできれば、ご両親もよく噛んで召し上がるようになり、家族の健康を守ることにもつながると考えます。

 

 

地域が抱える課題や時代の変化にも対応

Q:今後は、「化学療法対応食種の確立」にも力を入れていかれるとか。

三浦:当院が昨年4月に「国指定地域がん診療連携拠点病院」となったこともありますが、それ以前よりがんの化学療法を受けておられる患者さんも少なくありません。味覚障害・吐き気などの副作用で食欲が落ちてしまうと抵抗力も落ちてしまい、それを少しでも防ぐための食事の調整を個別対応してきましたが、今後は共通した「化学療法対応食(通称:ケモ食)」でもサポートしていけるよう努力と工夫を重ねていこうと思います。
また、神戸西地域(西区・垂水区・須磨区)の病院等の管理栄養士と「西神戸臨床栄養研究会」という場を設けており、情報・知識・課題の共有、相互研鑽、コミュニケーションを深めています。高齢化に伴いがんや低栄養といった悩みを抱える患者さんが増えていくことが予想されますし、新年度の診療報酬改定で栄養食事指導の対象および指導内容が拡張される予定です。これからも栄養指導のより一層の充実により、地域の課題を解決する一助となれれば嬉しいですね。

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──ありがとうございました。

 

 

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