宗教的理由による輸血拒否をされる患者さんに対する医療従事者の対応には、いわゆる「絶対的無輸血」と「相対的無輸血」の立場があります。「絶対的無輸血」とは、患者さんの宗教的信条を救命より最優先し、免責確認書に同意して、輸血が必要な場合でも、赤血球、白血球、血小板、血漿の4輸血成分は輸血せず、アルブミン、免疫グロブリン、血友病関連凝固因子などを投与して治療を行うことです。「相対的無輸血」とは、患者さんの宗教的信条を尊重するが、救命を最優先し、必要に応じて成分輸血等の治療を行うことです。従って、「絶対的無輸血」を前提とした免責証書への同意は必要がありません。
従来、当院は平成8年6月3日施行のガイドラインに基づき絶対的無輸血の立場を取っていました。しかし、治療というのは医療者側と患者さんの協働行為であり、患者さんの自己決定権も尊重すべきですが、医療者側の良心も同様に重要であり、今後は、輸血拒否をされる患者さんの意向はできるだけ尊重するが、輸血しないと命が危ないと医師が判断する場合には輸血する「相対的無輸血」の立場をとることを原則にすることにしました。