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PUBLIC RELATIONS広報

にしこうべ vol.05 2014年04月
多職種のスタッフの力を結集し、シームレスながん診療連携体制を

発足2年目を迎えた「がん総合診療部」

かつては「ニュータウン」と呼ばれた神戸西地域ですが、近年は高齢化が進み、その人口構成あるいは疾病構造にも変化が出てきました。そうした変化に対応すべく、2013年春に当病院の理念と基本方針を見直す中、高度専門医療(特にがん医療)のさらなる充実のために同年3月に新設されたのが「がん総合診療部」です。外科手術のみならず、放射線療法、化学療法、緩和ケア、患者さんやご家族からのご相談への対応など、心のこもったがん治療とケアに取り組む新体制を目指します。

(お話は、がん総合診療部副部長/放射線科部長 今中 一文医師)

集学的治療とチーム医療でQOL(Quality of Life)向上を目指す

「がん総合診療部」の名称にある“総合診療”とは、どういう意味ですか?

がん総合診療部副部長/放射線科部長
今中 一文医師

今中:当病院は、2011年6月29日に「兵庫県指定がん診療連携拠点病院」となりました。これは、地域のがん診療連携の中核を担い、住民の皆さんに安心で適切ながん診療を提供できる医療機関を指定するものです。集学的治療や緩和ケアによる総合的な診療を提供できるハード面、ソフト面の要件を備えていることが指定の要件となっており、いずれもがん総合診療の重要なポイントとなっています。 まず、集学的治療ですが、外科的治療、内科的治療、放射線治療など複数の治療法を組み合わせた治療法のことです。がんの種類や病期(ステージ)、患者さんの年齢や体力などによって効果的な治療法は変わってきますから、患者さんにとって最適な治療法を組み合わせていけるよう、専門分野の異なるスタッフが意見を出し合います。
次に、緩和ケアにより、がんに伴う体と心の痛みを和らげ、生活やその人らしさを大切にして患者さんのQOL向上を目指します。その実践には、医師のみならず、薬剤師、看護師、管理栄養士ら多くの職種によるチーム医療の推進が必要です。
さらに、患者さんやご家族に安心して療養生活を送っていただくためには、地域の医療機関と連携を目指す努力が欠かせません。がんの予防や早期発見、治療後の在宅療養などを含め、“地域完結型”の医療体制を整えていくことが理想です。

では、「がん総合診療部」には、いろいろな職種のスタッフが関わっているのですね?

今中:はい。コアメンバーとして副院長が部長を、放射線科部長である私のほか、泌尿器科部長、免疫血液内科部長代行、がん看護専門看護師の4名が副部長を務めています。近年、国内の患者が急増している前立腺がんを担当する『泌尿器科』、化学療法の要となる『免疫血液内科』、診断・治療のサポートに不可欠な『放射線科』、がん看護に多角的な視点でかかわる専門看護師と、それぞれの専門分野から意見や知恵を出し合える配置になっていると自負しています。
そのほかのメンバーは、がんを取り扱う各診療科の医師、がん関連認定看護師や薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、管理栄養士ら総勢118名からなる組織で、「化学療法委員会」「緩和ケアチーム」「Cancer Board」「がん教育・研究チーム」「がん相談支援センター」「患者会」「Clinical Indicator」「広報」など2つの委員会と6つのチームで編成されています。たとえば「Cancer Board」では、原発巣不明がんの診断や治療方針、心臓や腎機能への負担が懸念される患者さんへの抗がん剤投与の検討など、多職種・多部門で調整・合議を行います。従来の診療のすき間を埋め、これまで以上に効率的で質の高い診療サービスを提供できる仕組みだと思います。

緩和ケアやセカンドオピニオンの外来が増加

部が新設されてから1年経ちましたが、具体的にはどのような成果がありましたか?

広報チームが作成したパンフレットとがん総合診療部が特集された広報誌そよかぜ

今中:まず、がん総合診療部の立ち上げで住民の皆さまが、がんという病気とその治療について、これまで以上に興味を持ってくださったことを感じています。外来患者さんの数字の変化として表れてくるのには少し時間がかかると思いますが、「緩和ケア外来」は昨年1年間で10件だったものが今年は42件に、「セカンドオピニオン外来」は昨年6件だったものがこれまでに25件に増えることなどは成果の一つかもしれません。 広報チームが、部を設立した趣旨などをまとめたパンフレットを作成して地域の医療機関にお配りしたので、そうしたPR効果の可能性もあります。院内に設置している広報誌「そよかぜ」でも部での取り組みを紹介させていただいておりますので、来院される機会があれば手にとっていただければ幸いです。
また、院内向けにも活動レポートを出しており、「がん総合診療部」の活動が病院全体に良い刺激を与えられるよう、頑張っていきたいと思っています。

入院患者だけでなく、外来患者にも関係のある活動はありますか?

今中:がん治療は入院による手術や治療が全てではありません。予防や早期発見、あるいは、退院後のケアも大切です。そこで「がん総合診療部」では、患者さん、ご家族や一般の方にも参加していただける「西神戸がん教室」を企画して、がんの予防法、がんの症状や治療についての基礎知識などをお伝えしています。こうした啓蒙活動も、当部の重要な役割のひとつです。

今後さらに注力したい活動や、何か不足を感じていることはありますか?

今中:昨年9月、「緩和ケアチーム」と、地域の医療機関との間で西神戸緩和ケア・地域連携の会を立ち上げ、今年2月に講演会を催したところ、95名もの方にお集まりいただき、その熱意にこたえられるよう継続開催を目指しています。また、がんに関するさまざまな相談や悩みに応じる「がん相談支援センター」も今年2月にスタートし、当院通院中の患者さん、ご家族を対象に対応しています。
こうした新たな取り組みを続けていくためにはマンパワーが必要です。現在、身体担当の緩和ケアの専任医が1名在籍しておりますが、できれば“専従”の体制を整えたいですね。そのほか、腫瘍内科医、がん専門薬剤師、がん化学療法看護認定看護師といったがん治療に関わる専門資格を有するスタッフも、少しずつ増やしたいと思っています。

人材育成のため、看護師向けの研修プログラムを主催されていると聞きました。
どのような内容で、どんな成果が期待できるのでしょうか?

今中:アメリカで開発された終末期ケアを提供する看護師や医療従事者を対象としたプログラムを日本の文化や実状に合わせて改定した「ELNEC-J(エルネックジェイ)コアカリキュラム教育プログラム」を、過去3回実施してきました。
ロールプレイやグループワークを交えて臨死期のケアについて学ぶことで、患者さんの痛みやご家族の悲しみに寄り添い、患者さんの意思決定をサポートできるコミュニケーションを身につけていきます。今年も10月頃に実施の予定で、地域医療の発展にも貢献できればと、院外の医療従事者の皆さんにも門戸を開いています。

相談支援センターや患者会も充実を

以下の画像は増築工事完成後のイメージ図です。ハード面の充実で新しい展開が期待されます。

今年2014年は開院から20年の節目でもあり、春には改築工事が完了する見込みです。
これを機に、さらに力を入れたい課題などがあればお聞かせください。

今中:今回の増床改築の主なねらいは手術室の拡充でした。ハードの充実が、がん総合診療にメリットをもたらすことは間違いないでしょうが、それを生かし切るためにも、私たちスタッフは専門知識や技術の研鑽にいそしみます。そして、チーム医療の本領を発揮していけるよう、研修や勉強会、がん総合診療部内に置かれたCancer boardの運営などに、一層力を入れてまいります。
今回の改築によって外来化学療法センターが拡張し、「がん相談支援センター」の設備や機能の充実を図ることが叶えば、これまで以上にじっくりと、患者さんやご家族とコミュニケーションをとれるのではないかと期待しています。将来的には、患者サロンのようながん治療を体験した方にしかわからない思いを共有できるような場をご提供できればいいですね。

ありがとうございました。

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