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にしこうべ vol.06 2014年07月
内科、外科から放射線科、救急まで様々な呼吸器疾患に連携力で対応

呼吸器センター開設で入院生活も安心

現在、日本人の死因トップは「がん」ですが、なかでも肺がんは最多です。
自覚症状がほとんどないため早期発見が難しく、現在の発達した医療でも治癒が難しい疾患のひとつです。
肺がんのほかにも、喘息、肺炎、COPD、気胸など呼吸器系の疾患は多種多様ですが、西神戸医療センターでは内科、外科ともに呼吸器を専門とする科が独立しており、放射線科や救急とも連携しながら治療に取り組んでいます。

(お話は、呼吸器外科部長 青木 稔医師、呼吸器内科部長 池田 顕彦医師)

呼吸器系疾患は数百種類もある!?

まず、呼吸器疾患にはどのようなものがあるのかを教えてください。

池田:循環器系、消化器系の疾患と並んで患者数が多く、疾患の種類が多いことが呼吸器疾患の特徴です。代表的なものをあげると、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺疾患、喘息などのアレルギー症状、結核などの感染症などです。また、リウマチなどの全身疾患が肺におよんで症状が現れるケースもあり、細かく分類すると数百種類の疾患があるとも言われています。
外来にお越しになる患者さんは、咳や痰が出る、熱がある、喉に痛みや異変を感じる、胸が痛いといった症状を訴えることが多いですが、肺がんであっても初期の段階では自覚症状が出にくく、きちんとした検査をしないと異常が見つかりにくいものです。
初診時に当院で行う検査は、主にレントゲンと血液検査になります。レントゲンでは、全体的に白い曇りがあれば肺炎などの疾患を、くっきりと白い塊があれば腫瘍の可能性を疑います。血液検査では、炎症やアレルギーの有無を確認します。さらに必要に応じて、痰などを細胞検査にかけることもあります。

多種多様な呼吸器疾患の中で、手術で治癒する可能性があるものは呼吸器外科で扱うのですね​。

青木:その通りです。もっとも症例が多いのは悪性腫瘍です。肺のほか、左右の肺に囲まれた縦隔、胸壁などに腫瘍ができることがあります。発病部位が肺そのものにある原発性肺がん以外にも、他の臓器からがん細胞が飛んできて発病する転移性肺腫瘍も多く見られます。肺は臓器の中でもきわめて血流量が多く、リンパの流れも活発なので、がん細胞にとって転移しやすい臓器なのです。
腫瘍のほか、気胸や膿胸などの感染症に関しても、外科治療が有効なケースがあります。たとえば、交通事故で肋骨を折ったことで外傷性気胸を起こした場合などは、救急対応が必要になりますので、当院のような総合病院で呼吸器外科と救急とが連携して処置を行えることは患者さんにとっても良い体制ではないかと自負しております。

呼吸器センター創設で患者さんに安心感を

2014年5月7日に「呼吸器センター(東病棟10階)」が新設されたそうですね。

青木:従来から、呼吸器内科と呼吸器外科とは治療に関して密接な連携を行ってきましたが、入院病棟は内科と外科とで別々の場合もありました。今回のセンター開設により、慢性閉塞性肺疾患、がん、肺炎、気胸といった呼吸器疾患の患者さんが1カ所に集まることになり、たとえば内科治療から外科治療に移るケースや、外科手術後に内科的治療や放射線治療を行いながら経過をみるといったケースも、スタッフの顔ぶれが変わることなく対応できるようになりました。

池田:各科の医師や看護師同士の連携がこれまで以上にスムーズになり、患者さんにとっても安心・安全な医療を提供できる環境が整ったのではないかと思っています。内科、放射線科と合同でカンファレンスを行い、日々の経過を見守りながら、その患者さんにとって最適な治療法は何か、どのような順番で施せば効果を最大にできるか、といったことを相談できることは、医師としても心強いことです。

専門医や手術に必要な設備なども充実しているのでしょうね。

3D画像を見ながら、症例の検討を行う。

青木:規模の小さな病院では、「呼吸器」として独立した科を持つことは少なく、神戸市内でも限られた総合病院にしか、呼吸器内科・呼吸器外科はないと思います(日本呼吸器外科学会、日本呼吸器内科学会の施設認定を受けています)。
呼吸器外科に5名、呼吸器内科に7名の医師がおり、外科では患者さんへの身体的負担が少ない胸腔鏡下の手術を多く手がけており、肺がんや気胸などを主に全手術の9割近くを占めるまでになりました。胸腔鏡手術は、術野を拡大してモニターで見ることができ、しかも術者以外の複数のスタッフが同時に見ることができます。それは、手術の安全性を高めると同時に、専門スタッフの教育にも役立ち、ひいては患者さんに安心・安全な医療を提供することにつながるのではないかと思います。

今さらですが・・・喫煙は百害あって一利なし

外来では「禁煙教室」が開催されていますが、反響はいかがですか?

池田:呼吸器内科の医師が担当しており、6、7年前から継続しています。肺がんを始めとする呼吸器疾患において、「タバコ」はプラス要素がひとつもない、マイナスだけのファクターです。もっと言えば、呼吸器系以外のあらゆる病気についても、喫煙によって血流を悪くすることは百害あって一利なしです。
今は情報社会ですから、患者さんも喫煙の有害性についてはよくご存じなのですが、最終的には「本人に辞める意志があるか」が問題です。意志のある方をサポートさせていただく準備はできているのですが…。

今後日本では、肺がんで亡くなる人は減っていくでしょうか?

青木:日本人の死因トップはがんですが、その中で肺がんは死亡数で1位、罹患者数では2位です。
肺がんはもともと生物学的に活動性が高く、胃がんなど消化器系のがんに比べて再発率が高いので厄介な疾患と言えるでしょう。
あくまでも統計的な傾向のお話ですが、日本より早くから禁煙推進に取り組んできた諸外国では、肺がんで亡くなる数が減少に転じたというデータが出ています。日本でも、最近の若い方は喫煙しなくなっていますし、全国的に禁煙志向が高まっているようですから、十数年後には「死因トップ」の汚名を返上できるかもしれませんね。

ありがとうございました。

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