MENU

PUBLIC RELATIONS広報

にしこうべ vol.07 2014年11月
安全かつ温もりある手術室を増室!最新技術チーム医療で地域の命を守る

8つの手術室でより安定した体制に

これまで西神戸医療センターでは、6つの手術室をフル稼働させて年間約5600件の手術を実施してまいりました。1部屋当たり約900件という数字は、一般的な総合病院や大学病院の平均値を大きく上回っており、神戸西地域の救急対応を担う中核病院として、手術室の増室は長年の課題でした。
開院20周年を迎えた今年、ようやく手術室の増室が叶い、6月2日より8部屋での運用がスタートしました。さらに、ロボット手術の「ダヴィンチ」を導入するなど、設備面においてもあらゆる手術に対応できる環境が整ってきています。

(お話は、中央手術部長兼外科・消化器外科部長 京極高久、中央手術部看護師長 田中亜希子)

阪神・淡路大震災後に手術件数が急増

平成6年の開院以来、手術件数はずっと増加傾向にあるそうですね。

京極:もともと、神戸西地域には総合病院が少なかったのですが、ニュータウンの開発に伴って地域の中核となる病院が必要ということで、平成6年に西神戸医療センターが開院しました。初年度の手術件数は年間1500件ほどでしたが、翌年1月の大震災によって市井の病院の多くが運営困難な状態に陥ったこともあり、平成7年度の年間手術数は一気に3,500件を超えました。以来、じわじわと件数が伸びてきたことは、地域の皆さんに頼っていただいている証だと思います。しかしながら、平成19年に5,000件を超えた頃からは、手術のスケジュールが過密になり救急を受け入れる余裕がなかったり、患者さんをお待たせする時間が長くなったりと、地域医療を担う体制として不足を感じるようになり、手術室の増室を申請することになったのです。

手術室が6室から8室に増えたということは、スタッフも増えたのですか?

田中:手術室には看護師長である私と主任2名を含め看護師27名が所属していましたが、4月から5名が加わり、32名の体制となりました。手術室の看護師は、病院内にある手術を行う12の診療科すべての知識を幅広く網羅しておかねばなりません。とくに経験の浅い看護師にとっては働きながら勉強するのが大変でしょうが、みな熱心に取り組んでくれています。
また、ベテラン看護師であっても新しい医療機器が導入されるたびに知識をさらに磨く必要があります。新たな術式に合った器械出しをマスターしたり、特殊体位を研究して患者さんの褥瘡を抑えたり、保温に気を配ったりして、合併症の少ない手術になるよう努めています。安全であることは手術の大前提ですし、患者さんにとっては一生に一度の経験かもしれませんので、落ち着いた環境で安心して手術を受けていただけるようにと思っています。

また、患者さんの術前訪問も大切な業務です。「全身麻酔は生まれて初めて」と不安げにおっしゃる方も少なくないですし、「手術室は寒い、怖いところ」といった固定概念は根強いものですが、そうした不安を取り除くのが術前訪問の目的です。リラックスした状態で手術を受けていただけるように、手術室の写真をお見せしながら麻酔までのプロセスを説明したり、質問や疑問にお答えしたりしながら、「術中はいつでもそばにいますから」と励ますようにしています。

専門分業化で医療機器の進化に対応する

8部屋の手術室には、すべて同じ医療機器が揃っているのでしょうか?

京極:大きな大学病院のように診療科ごとに専用の手術室が割り当てられるわけではないので、実施する手術の内容に応じて必要な機器を搬入するという入れ替え方式をとっています。手術用顕微鏡や術中レントゲン透視装置といった汎用性の高い機器に関しては出来るだけ最新機器の導入を進めています。また、最近は各科で内視鏡を使った手術が増えており、泌尿器科では医療ロボット「ダ・ヴィンチ」も今年9月から稼働しています。患部の細かいところまで立体視しながら、手ぶれなく精緻に操作できるというロボットならではのメリットに加え、まるで人間の手と同じように鉗子がフレキシブルに動くという性能の高さが魅力です。現在は、前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘手術(平成24年4月より保険適用)にのみの使用です。

内視鏡(腹腔鏡)を使った手術にはメリットが多いようですね。

京極:私が専門とする消化器外科の領域に関しては、食道がん、胃がん、大腸がんの7~8割が腹腔鏡手術になっています。また、肝臓がんや膵の良性腫瘍などに対しても内視鏡手術でアプローチする例が増えてきましたね。手術中に患者さんに与えるダメージが少ないこと、傷口がごく小さいため術後の回復が早くQOLが高いことなどから、他の診療領域でも内視鏡の活用はますます増えてくるでしょう。手術の精度を上げるためには、医師の技術力もさることながら、臨床工学技士のような専門家と連携を取りながら日進月歩の医療機器の進化に対応していく努力が欠かせません。

田中:ダヴィンチが導入された時は、まず手術の手順書を一から作り直しました。そして、現在は数名ずつが実地訓練を積んでいます。また、臨床工学技士2名と、器械類の滅菌処理などを担当する材料部のスタッフ4名が手術部に常駐し、専門分野についてサポートしてくれています。もちろん、麻酔科医師から教わることも多いです。このように複数の職種で分業し、助け合いながら専門家チームとして協力していく体制が整っていることは、患者さんに安心・安全な手術を提供するうえでも良いことだと感じています。

緊急手術であっても「安心、安全な医療」を

増室が完了した6月以降、手術件数などの実績に変化はありましたか?

京極:まだ3カ月分の実績に過ぎませんが、昨年度の同じ時期に比べて手術件数が13.7%増加し、とりわけ緊急手術に関しては30.2%の増加となり、増室前の課題であった緊急手術の受け入れ状況が改善しつつあると手応えを感じています。

平成25年6〜8月の手術件数(件)

手術件数 1,453
うち緊急手術 199
うち時間内緊急手術 96
うち時間外緊急手術 103

平成26年6〜8月の手術件数(件)/(対前年度)

手術件数 1,652/(+13.7%)
うち緊急手術 259/(+30.2%)
うち時間内緊急手術 130
うち時間外緊急手術 129

もとより、6部屋しかない手術室を効率よく運営してきた強いチームワークがありますので、充実した設備を生かせるように今後も努力を続けてまいります。

田中:手術室の看護師は、年齢層が幅広く、結婚後も活躍している人がたくさんいます。また、明るく和やかなムードの中にも、手術室認定看護師の資格を目指すなど、知識吸収や技術鍛錬に力を注ぐプロ意識も持っています。
若いナースは「やる気と情熱」を、ママナースは「母親らしい優しさ」を、ベテランナースは「豊富な知識や経験」を…と、それぞれの特徴を生かすことで、患者さんに安心して過ごしていただけるような温かい環境をつくっていきたいですね。

ありがとうございました。

一覧へ戻る

ページトップヘ
ページトップヘ