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PUBLIC RELATIONS広報

にしこうべ vol.09 2015年07月
集学的医療から緩和ケアまでがん医療をトータルに任せられる病院に

相談受付や情報提供等ソフト面も充実

西神戸医療センターは、平成27年4月に「国指定地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けました。これまでも「県指定がん診療連携拠点病院」として地域に根ざしたがん医療に力を入れておりましたが、手術療法、化学療法、放射線治療の設備やスタッフの充実を図り、さらに質の高いがん医療を提供できる体制を整えました。
また、まだ不十分ながら緩和ケア病床も新設しましたので、治療が一段落した時期はお近くの診療所にご通院いただき、入院が必要な場合には当院がお受けするといった連携により、療養生活をトータルにサポートすることが可能です。

(お話は、がん総合診療部副部長・泌尿器科部長・伊藤哲之医師、がん総合診療部副部長・がん看護専門看護師・御園和美看護師)

西神戸エリアの地域がん診療の中核として

国指定地域がん診療連携拠点病院は兵庫県下にいくつあり、どんな目的で指定されたのですか?

伊藤:厚生労働省ががんの罹患率・死亡率の減少を目指して掲げた「第3次対がん10ヵ年総合戦略(平成16年度~25年度)」の中で、お住まいの場所が都心であろうと過疎地であろうと格差なく、全国どこでも標準的な専門医療を受けられるよう、がん医療の均てん化を図る動きがありました。その具体策として、二次医療圏(兵庫県は、神戸、阪神南、阪神北、東播磨、北播磨、中播磨、西播磨、丹波、淡路、但馬の10圏域)に最低でもひとつずつの、がん診療連携拠点病院を置くことになったのです。現在、当院を含めて兵庫県下に14カ所あります。
同じ神戸圏域内にある、神戸市立医療センター中央市民病院と神戸大学医学部附属病院とは、ある程度の役割分担をしながら相乗効果を上げるよう心がけており、当院は神戸西エリアを中心とした地域密着の診療、地域の医療機関との診療連携などに力を注いできました。

がんの3大療法(手術療法、化学療法、放射線療法)でも高い質を追及しておられます。特に伊藤先生がご専門の泌尿器科では、ロボット支援手術の実績が増えていますね。

伊藤:平成26年9月から、手術支援ロボット(商品名:ダヴィンチ)によるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を始めました。前立腺がんに対する前立腺全摘除術においては、がんの制御成績は従来の手術と同等ですが、一番の合併症である尿失禁の程度が期待通りはるかに改善しています。ロボットアームは人間の手指より関節が多く、3D画像を見ながら操作できるため、より繊細かつ複雑な動きで患部にアプローチすることができます。当院では、多職種の優れたロボット手術チーム(5人の腹腔鏡手術技術認定医、5人のがん治療認定医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士等)により安全性の高い手術が出来ること、手術待機期間が1~2ヵ月と比較的短いことが、患者さんにとってメリットになるものと考えております。

「いざ」というとき頼りになる専門性とチーム力

今回、県指定から国指定に変わるために、強化したことを具体的に教えてください

伊藤:がん関係の受付6を新たに設置しました。まず、抗がん剤治療を外来通院で行う化学療法センターを拡大し、ベッド数を11床から20床に増やしました。写真も併せてご覧いただくと雰囲気を感じていただけると思いますが、設備の整った安全で清潔な病床です。それから、「緩和ケア病床」2床を新設しました。がんによる痛みなど苦痛が急激に増した患者さんの入院受入れができるよう準備しています。がん緩和療法は免疫療法と並んで注目度の高い分野で、従来の3大療法に加えて、がんの5大療法と称される日も近いのではないかと目されています。

受入れ体制に厚みが出たことで、「もし必要になれば、いつでも西神戸医療センターに行ける」と思っていただければ、抗がん治療や術後の緩和ケアなどをしながらご自宅におられる間も、患者さんやご家族に安心にお過ごしいただけるのではないでしょうか。

御園:外来では専門資格を持った医師、看護師、薬剤師が増員され、より細やかな診察を行えるようになりました。たとえば、「緩和ケア外来」は週2日から週3日に拡大して、専門医ががんに関する身体的・精神的さらには社会的な苦痛を和らげるための診察を行っております。また、「がん看護外来」も隔週から毎週に外来枠を拡大し、ゆっくりとご相談をお聞きできるように時間を確保しております。そこで、がん看護専門看護師が、病状に対する不安、お身体の苦痛な症状、ご家族の不安等、様々なご相談に対応致します。何かお困りのことがございましたら、一度お問い合わせ頂けたらと思います。

伊藤:新設された「薬剤師外来」では、抗がん剤の飲み方や副作用などの注意事項等を薬剤師がていねいにご説明します。これまでは、医師が説明をすることがほとんどでしたが、どんどん新薬が開発されて種類も増えていますので、薬剤師の豊富な知識でサポートしてもらえると私たちも助かります。こうした多職種連携が患者さんにもスタッフにも魅力的な病院であり、より高いレベルの診療と安心感の提供につながると確信しています。

多職種連携によるチーム医療は西神戸医療センターの得意とするところですね。

伊藤:職種間の垣根が低いのは、当院の持ち味のひとつ。国指定地域がん診療連携拠点の指定を受けるために、専門知識を持った医師3名(緩和ケア内科1、腫瘍内科1、形成外科1、いずれも非常勤医師)や、専門資格を持った看護師、薬剤師が新たに加わり、全体の士気も高まってきました。研修医にとっても魅力的な職場ですので、さらに若いパワーにも加わってもらえるのではと期待しています。
看護師や薬剤師をはじめとするメディカルスタッフの存在は本当に大きいですよ。誰にも言えない本音を看護師だけに漏らす患者さんも少なくないですし、細かいことへの気配り・目配りや、生活指導のていねいさといった医師にはない持ち味を生かしてくれています。知識のある薬剤師は圧倒的に頼りになります。
がんは治らない人もいます。治らずつき合い続ける場合、レベルの高い統合的な診療が大切です。

手術後のリハビリや自宅療養の悩みにも寄り添いたい

患者ライブラリーが新設され、がん相談支援センターも拡大したそうですね?

御園:病院というのは、どうしても息が詰まるような空間になりがちです。そこで、患者さんやご家族にホッとくつろいでいただけるような場所をつくろうと、カフェをイメージしたインテリアの患者ライブラリーを作りました。がんに関連した書籍やインターネットの閲覧(現在準備中)ができます。すぐ隣にはスペースが広くなったがん相談支援センターがあり、国立がん研究センター主催の専門研修を受けた看護師ががん治療に関することや社会保障に関することから精神的な悩みへのご相談などに対応しています。
様々なことに困られ、悩まれている患者さんやご家族の方の力になりたいという思いから今までのがん相談支援センターの運用を見直し、一人でも多くの方のご相談に対応出来るように、運用の時間枠(平日9:30~17:00)を拡げ、可能な限り来ていただいたときに対応できるように予約体制を変更致しました。また、落ちついた環境でゆっくりとお話いただけるように新しく相談室を設置し、お一人の相談枠を45分と致しました。

最近では、一度ではなく、外来診察日に合わせて立ち寄っていかれる患者さんや、『前もここに相談に来たから・・・』と新たなお困りごとをご相談にいらっしゃる方、また『知人に相談できるところがあるよって聞いたから・・・』とおっしゃる方が多くおられることを聞き、少しずつ西神戸医療センターのがん相談支援センターをご利用して頂けるようになってきたことを実感しております。今後もより皆様のニーズに沿った相談支援が行えるように、そして皆様にとって『身近ながん相談支援センター』となれるようにさらに努めていきたいと感じております。

がん専門のリハビリテーションが始まったそうですが、どんな内容ですか?

伊藤:がんの手術や治療に伴う筋力低下をそのままにしておくと、生活能力が衰えていき寝たきり状態につながる恐れがあります。また、咽喉系のがんの場合は、嚥下困難で食事をとるのに苦労する、しゃべりにくくなって意思疎通が難しくなるといったケースが珍しくありません。ほかにも、浮腫や呼吸困難など、さまざまな後遺症や副作用があります
そうしたがんの治療や療養上の注意点を踏まえ、がんの部位に合わせてQOLを保つため専門資格を持った医師や各種スタッフがリハビリテーションを実施しています。

今後の目標をお聞かせください。

伊藤:自院のがん診療の体制を強化するだけでなく、地域全体のがん治療がよりよくなるようリードするのが、国指定地域がん診療連携拠点病院の役割。たとえば、診療連携にとどまらず、院外の方にも参加していただく形で、各種のオープンカンファレンスには開業医の方々にも参加して頂いていますし、緩和ケアや人生の最終段階における診療などがんに関わる研修会を行ったり、地域連携パスを活用したりして、地域の医療機関と顔の見える関係を構築できるようコミュニケーションをとっていきたいと思います。
また、患者さん・ご家族・地域の皆様からのがんに関する相談受付や情報提供を一層充実させてまいります。がん総合診療部が窓口となって年6回の「がん教室」も開催しております。病気や治療のこと、それにともなう食事や生活に関する情報をお話しています。参加費も事前予約もいりませんので、ぜひお気軽にご参加ください。

ありがとうございました。

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