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にしこうべ vol.12 2016年07月
日本人男性の10人に1人が前立腺がんに?!ロボット支援手術で治療法の選択肢が広がる

術前から術後までチーム医療でQOLに配慮

泌尿器科が担当する疾患は、尿路性器の悪性腫瘍や感染症、前立腺肥大症、尿路結石などが中心です。とくに前立腺がんの症例は増加傾向にあり、西神戸医療センターでは平成26年9月に導入した「ダヴィンチ」を用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘手術(平成24年4月より保険適用)にて約120例の実績があります。
また、総合病院の強みを生かした連携により、放射線治療や抗がん剤治療についても丁寧にご説明し、患者さんと共にQOL向上を考えながら、より安心・安全な医療を提供できるよう心がけています。手術までの待機日数が短いことも特徴です。

(お話は、泌尿器科、伊藤哲之部長、金丸聰淳医長、辻埜恭子主任看護師、伊吹伸介主任看護師)

3D画像と繊細な動きで腫瘍にアプローチ

泌尿器科では、ロボット支援手術の実績が増えているそうですね。

三浦:平成26年9月から、手術支援ロボット(商品名:ダヴィンチ)によるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を始めました。昨年実施した前立腺全摘除術68例のすべてがロボット支援腹腔鏡下で行われました。さらに平成28年4月からは、腎臓がんの部分切除にも適用拡大されたため、主に4センチ以下の小さな腫瘍(T1a)の切除にも使っています。
前立腺がんに対する前立腺全摘除術においては、がんの制御成績は従来の手術と同等ですが、一番の合併症である尿失禁の程度が期待通りはるかに向上しています。

辻埜:大きな手術には違いないのですが、術中の出血量が少なくて済みます。ICU(集中治療室)を出られるのも早く、翌日には院内を歩けるほどに回復する方がほとんどですね。

なぜ、ロボット手術にはメリットが多いのでしょう?リスクはないのですか?

三浦:「特別治療食」は、エネルギー(カロリー)や塩分などの量をコントロールした食事です。かつては多くの病院で「糖尿病食」など病名を冠した食種(食事の種類)名を付けることが多かったのですが、一人の患者さんが複数の病気を併発されていることもありますし、違う病名でも各個人の必要栄養量を計算すると同じ栄養量の食事が使えることも多く、アルファベット名称で区別した食種を設定し、個々の病態に応じた食事が提供できるようにしています。

金丸:術後に尿失禁や勃起障害などの後遺症が起こるのは、前立腺を切り離すときに、尿道括約筋や勃起神経にダメージを与えてしまうからです。その点、ロボットアームは人間の手指より関節が多く、3D画像を見ながら操作できるため、より繊細かつ複雑な動きで患部にピンポイントでアプローチすることができます。

伊吹:ただし、従来型の手術と大きく異なるのは、頭部を低くした姿勢で長時間手術をするため、患者さんの状態に変化がないか見守っています。少し特殊な体位ですが、医師の触感を頼りに腸を避けることができないため、ロボットの鉗子を介すと物理的に腸を前立腺から遠ざけておく狙いがあります。

金丸:緑内障や脳動脈瘤などの持病がある方にはリスクになる体位ですので、後腹膜鏡下手術に変更することもあります。また、喫煙習慣がある方は全身麻酔による合併症のリスクが高いため、1カ月以上の禁煙をおすすめしています。

多職種連携やチーム医療によるバックアップも

ロボット支援手術の保険適用範囲は、これからも拡がっていくのでしょうか?

伊藤:腎臓がんの部分切除は今年4月からの保険適用ですでに3例の実績がありますが、腹腔鏡手術より難易度が下がりますし、患者さんにとっても腎臓の機能を温存できる可能性が高く、症例次第では「T1b」ステージでも実施していくでしょう。
厚生労働省が決めることなのでお約束はできませんが、世界的には子宮がんの全摘手術が一番多いですし、胃がんや膀胱がんにも保険適用範囲が広がっていくのではないかと考えられています。

金丸:当院は麻酔科や手術室の協力により、ロボット支援手術を週4回実施できる体制が整っており、手術待機期間が1~2ヵ月と比較的短くなっています。

辻埜:手術の成功と同じくらい、術後の早期退院など、患者さんのQOL(生活の質)を上げることも大切にしています。たとえば、私たちも一緒に「骨盤底筋運動」をやるなど、和やかな雰囲気でチーム医療を実践しています。また、看護師の中にはWOC(皮膚・排泄ケア認定看護師)もいて、尿路ストマを使った尿路変更の相談なども行っています。

患者さんの選択肢と安心感を増やすために

放射線治療や抗がん剤もどんどん進化していますよね。

金丸:当院ではIMRTといって、専用のコンピュータを用いて複数のビームを組み合わせることで、腫瘍の形にぴったり合うよう照射する治療法が可能です。正常組織へのダメージが少ない分だけ副作用のリスクも下がります。

辻埜:入院病棟にも外来にも薬剤師がいて、病棟内での投薬チェックや通院治療時の抗がん剤の選び方などを指導してくださるのが心強いですね。当院がモットーとする安心・安全な医療にもつながっているのではないでしょうか。

伊藤:新設された「薬剤師外来」では、抗がん剤の飲み方や副作用などの注意事項等を薬剤師が丁寧にご説明します。また、療養中に疼痛がおこれば「緩和ケアチーム」、心理的問題があれば「精神科リエゾンチーム」と、さまざまなスペシャリストを揃えることで受入れ体制に厚みを持たせています。
こうした多職種連携が、より高いレベルの診療と安心感の提供につながると確信しています。泌尿器系の悩みは打ち明けにくいこともあるでしょうが、「いつでも西神戸医療センターに相談できる」と頼りにしていただけると嬉しいですね。

ありがとうございました。

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