にしこうべ vol.13 2016年11月
「不治の病」という印象が強い血液疾患の病状も不安も和らげる検査、診断、治療
数少ない専門科として患者に寄り添う
白血病や悪性リンパ腫などに代表される血液疾患。若い頃に罹患されるケースもありますが、近年は高齢化とともに患者さんが増加しています。つまり、加齢とともに血液も“老化”したことが要因となり、血液疾患を引き起こすというわけです。
疾患によっては診断が確定する前に進行してしまうことも稀ではありませんし、これといった予防法もありません。いかにして早期発見、早期治療につなげていけるかが大切なのですが、血液専門の科を置く病院は限られており、西神戸医療センターはその一翼を担っています。
(お話は、免疫血液内科・新里偉咲部長、田中康博医長、橋本朗子副医長、田中淳医師)
適切な診断・治療で5割以上が治っている!?
入院、外来とも患者さんが増えているようですが、どのような疾患が多いのですか?
新里:平成27年春のリニューアルでベッド数が既存の倍に増え、入院患者さんは25~26人で推移しています。その大半を、急性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫が占めています。一方、外来の患者さんは一日平均約80人で、近隣人口の高齢化に伴い、骨髄異形成症候群が増えてきました。かかりつけ医の診断や定期健康診断などで異常がみつかり、血液専門の検査・診断を求めて来院されることが多いですね。
免疫血液内科で扱う疾患は「難病」や「不治の病」というイメージが強いようで、診断が下ると動揺し、「治るのでしょうか?」と質問されることがしばしばです。そうした不安に寄り添うことも、私たちの大切な務めだと考えています。疾病ごとに違いはあるものの、全体では50~60%が治癒に向かっています。ご想像より高い数字ではないですか?
異常がみつかるというのは、具体的にはどのようなことですか?
田中(淳):あくまでもいろいろな指標の中のひとつですが、血小板数が低いことはかなり危険なサインです。症状としては、貧血症状があまりに酷くて立っているのも辛い、むくみがひどいなど。慢性的な貧血とはレベルが違うので、おかしいなと思ったら早めに来院されることをお薦めします。
血液が元気になって他科の治療が進むことも
どのような治療が行われるのでしょう?入院や手術が必要ですか?
新里:急性白血病の寛解導入療法等、初回の抗がん剤投与を行う時、投薬の変更などで経過を見る必要があるときなどを除き、ほとんどが通院治療で大丈夫です。
血液悪性疾患に対する化学療法は全国標準のプロトコールを用いており、治療成績は良好です。抗ガン剤、分子標的薬、生物製剤などの薬剤開発には目覚ましいものがあり、毎年のように新薬が登場しています。なお、移植を中心とした高度先進医療が必要な場合には、中央市民病院や先端医療センターと連携し、適切な治療を受けていただける様に配慮しています。
総合病院としての強みである他科との連携はありますか?
田中(康):診断のために必要な検査などは、他科の先生のご協力なくしては成り立たないので、頻繁にコミュニケーションをとっています。逆に、「患者さんの治療効果がなかなか上がらないのだが、何か血液に問題があるのでは?」といった相談があれば、積極的に対応しています。血液の健康は、全身の健康のベースですから、先に貧血症状を改善したことで他の症状にも改善が見られるということが珍しくありません。
在宅・通院治療を基本としてQOLに配慮
通院とはいえ、治療期間が長くなることもありそうですが…。
新里:私の場合、慢性骨髄性白血病で20年近いお付き合いになる患者さんがおられますね。もちろん完治を目指して手術(移植)に挑むのも選択肢のひとつですが、私たちは生活の質(QOL)を考慮して、合うお薬を探しながら病と共存していく患者さんに、できるだけ最後まで寄り添っていきたいと思っています。
来院された患者さんの診療を「断らない」、検査や診断の結果を「うやむやにしない」、治療の質を保つために、先進医療をやっている大病院や地域の医師と連携を取って「抱え込まない」というのが、当科の3原則です。
橋本:私は出産のために、一度お休みをいただいてから当科に戻ってきましたが、母親になったことで、患者さんの生活背景に気を配る視点が増えたように感じています。免疫血液内科に複数の常勤医をおく病院はまだまだ少ないので、これまでに蓄積された治療成果をまとめたり、先輩医師の経験や知見をお借りしたりしながら、「西神戸なら、いつどの医師に診てもらっても安心」と言っていただけるよう頑張りたいですね。
ありがとうございました。