にしこうべ vol.15 2017年07月
専門性と多様性を両立したオールマイティーな臨床工学技士として、チームで地域の医療をサポート
医療の安全を支える縁の下の力持ち、臨床工学室
臨床工学技士は、生命維持管理装置の操作および保守点検がおもな業務です。患者さんはもちろん、医師や看護師にとっても必要不可欠な医療機器のスペシャリストであり、縁の下の力持ちといえるでしょう。西神戸医療センターの臨床工学室では、より安全で高度な医療の提供を目指して、独自の目標管理システムを導入し、知識と技術のレベルアップに日々取り組んでいます。
(お話は、臨床工学室長で外科・消化器外科の伊丹淳参事、加藤博史副室長、児玉哲也主査、藤井清孝主査、佐々木文さん)
日進月歩の医療と医療機器に対応
臨床工学技士の業務は多岐にわたりますが、近年、増えている業務や症例はありますか?
伊丹:どの分野の業務も増えていますが、特に多くなったのはカテーテル業務でしょうか。
加藤:そうですね。2014年度のカテーテル治療および検査の件数は250件ほどでしたが、同年度内に、循環器内科に日本心血管インターべンション治療学会認定医を含む2名の医師が着任したことで、翌2015年度には約400件に増えました。昨年度は約580件です。 病院の医療機能が変わると、それに合わせて我々の業務も変えていかなければ、安全で質の高い医療を提供するためのサポートができません。変化に柔軟に対応して、モチベーションを高く持ち、色々なことに挑戦していくチャレンジ精神が求められる部門でもあります。
知識や技術のアップデートには、どのような工夫をされていますか?
藤井:私は血管造影室で心臓カテーテル業務を担当していますが、短期間にどんどん新しい機器や機能が出てきますので、外部の勉強会に参加して得た知識を部内で共有するよう努めています。
児玉:私はおもに人工透析室で血液浄化業務を担当していますが、常にメーカーとの情報共有、学会や技士会での情報収集を行っています。透析患者さんの場合、病状が安定したら自宅近くのクリニックに移ってもらうこともあるので、他の医療施設との交流や情報交換も重要だと思います。
佐々木:私は昨年出産し、1年間のお休みを終えて復職したばかりなので、今は周りについていくのが精一杯です。今後は部門の皆さんや家族の協力を得ながら、勉強会に参加していきたいと思っています。
目標管理システムを導入し、各自がキャリアパスを設計
臨床工学室ならではの取り組みや教育システムはありますか?
加藤:部門としては、独自の目標管理システムを導入しています。中長期的に、あるいは今年1年で、どのようなスキルや専門性を身につけていくべきか計画を立てて、目標達成に向けて進捗管理をしていきます。これによって、個人としても組織としても成長でき、一人ひとりがキャリアパスを描けるようになってきました。
藤井:私は以前、他の病院に勤めていた時に外部の勉強会に参加し、加藤副室長と出会いました。発表内容に感銘を受けるとともに、当院での様々な取組みをお聞きして、こういうところで働きたいと思って転職してきました。目標管理システムのおかげで、4年後、5年後に自分がどうあるべきかを考えるようになりました。
伊丹:昔と比べて、臨床工学技士の業務は拡大しています。今でも、透析なら透析だけ、心臓血管外科手術のサポートならそれだけしかしないというところは結構あると思います。しかし、うちは加藤副室長を中心として、全員にオールマイティーな臨床工学技士を目指そうという姿勢があり、今後、複数の業務を担当できるようにしようという取り組みを始めています。
今後ますます重要になる地域包括ケア
地域の医療機関との連携について教えてください。
加藤:呼吸療法チームの活動を例に挙げると、人工呼吸器が必要な患者さんに対して、医師、看護師、理学療法士、臨床工学技士がベッドサイドカンファレンスを行っています。また、呼吸療法認定士の資格取得のための研修会を当院で行い、当院のスタッフだけでなく他の病院から合わせて40名ほどが参加しています。地域の転院先となる医療機関でこの資格取得者が増えて、人工呼吸が必要な患者さんの受け入れがすすんで、今まで転院したくてもできなかった患者さんの転院が可能になればいいなとの思いから、チームで取り組んでいます。
児玉:透析患者さんの場合、地域で協力して患者さんを看る地域包括ケアが重要になってきます。透析施設の方だけでなく、訪問看護師、在宅医などにも集まっていただいて、オープンカンファレンスを行おうと、段階的に広げていっているところです。
佐々木:在宅医療を受ける患者さんのご家族との連携、コミュニケーションも重要ですね。例えば、ご自宅での人工呼吸器の使い方を指導する際、いかにわかりやすく説明するかを頭において、年輩の方でも理解しやすい資料を作ってお渡しするようにしています。
加藤:西神戸医療センターは、今年度から中央市民病院・西市民病院と同様に市民病院になりました。3病院合わせると、臨床工学技士が約50名となります。それぞれの病院で力を入れていることがあるので、今後、人事交流を行って、あらゆる面でレベルアップしていけたらと考えています。それが病院をよくするためであり、ひいては地域のため、患者さんのためになると私たちは思っています。
ありがとうございました。