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PUBLIC RELATIONS広報

にしこうべ vol.17 2018年03月
安全で質の高い医療サービスの提供と、安全体制の構築に取り組む「医療安全推進室」

安全な医療の提供に尽力する医療安全推進室

皆さんは、「インシデントレポート」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?インシデントレポートとは、医療現場で事故につながりかねないような、ヒヤリとしたりハッとしたりした出来事(インシデント)に関する報告書のことです。
西神戸医療センターの医療安全推進室では、院内の各診療科・各部門から提出されるインシデントレポートに基づき、各事例を分析して業務やシステムの改善・工夫を行い、安全な医療が提供できるよう尽力しています。

(お話は、医療安全推進委員会の伊丹室長、桜井副室長、奥村副室長、坂本看護師長、津山看護師長、瀬戸山看護師長、医事課医事係 山﨑、総務課総務係 室井)

インシデントの再発を予防し、アクシデントを未然に防ぐ

医療安全推進室の活動内容を教えてください。

奥村:医療安全推進室は私たち8名で構成され、患者さんやご家族の方への安全な医療の提供および、病院職員の安全を確保し、医療の質を保証することを目的として活動しています。
院内から集められたインシデントを週1回のミーティングで報告し、事例を分析して対策を練り、全職員が情報を共有することによって再発を防止し、医療事故の発生を未然に防いでいます。また、重要な事例については、毎月1回行われる医療安全推進委員会作業部会で検討し、病院のシステム改善に活かしています。

伊丹:濃厚な処置が必要となったり、入院が長引いたりした場合、その報告書はアクシデントレポートと呼ばれます。そうならないように各自で事例を分析し、すでに対策を講じた状態でインシデントレポートが提出されるケースが多く、医療安全に対する院内の意識の高まりを感じています。

具体的には、どのような安全対策を講じているのでしょうか?

坂本:最もわかりやすい例は、患者さんの間違いを防ぐためのお名前確認ですね。同姓同名の患者さんや、よく似たお名前の患者さんが少なくありませんので、本人確認のため、お名前を何度も伺っています。生年月日をお聞きしたり、診察券をご提示いただいたりすることもありますし、入院患者さんにはネームバンドの着用をお願いしています。

瀬戸山:強い磁場の中で行うMRI検査では、検査室に金属類を持ち込んではいけないのですが、職員がポケットから出し忘れたハサミやボールペンが、MRI装置に吸着してしまうことがあります。ほかにも、病棟から看護師が患者さんを検査室にお連れした際、うっかり酸素ボンベを着けたまま入室してしまい、酸素ボンベが吸着した事例がありました。
その後、吸着事故防止のため、検査技師さんが全病棟を回って注意を呼びかけ、看護師の補助をしてくださるサポーターさんの研修でも指導を行うなど、率先して啓蒙を行ってくださった結果、近年では吸着事故がほぼなくなりました。

坂本:医師が電子カルテを入力する際、なぜかワンクリックでデータを消去できるボタンがあり、操作を誤ってデータが消えてしまった事例がありました。人為的なミスでしたが、そういう機能があったこと自体が問題なので、システム管理者に連絡し、消去ボタンを使えないようにしてもらいました。ヒューマンエラーなのか、システムの問題なのか、環境に問題があるのかなど、インシデントの背景を考えて対策を取ることが重要です。

奥村:どの病院でも苦慮されていることでしょうが、高齢の患者さんが多いため、毎日どなたかが入院病棟のベッドから落ちたり、トイレなどに行く際に転倒したりします。当院は全国平均を下回っていますが、それでも年間300件近くの報告があがっていました。
そこで、患者さんが入院して来られたときに、歩き方や筋力があるかどうかなどを看護師が観察し、はじめから低いベッドを使ったり、ベッド柵を4点にしたり、患者さんがベッドから降りると看護師に通知されるセンサー付きのマットを設置して、素早く駆けつけるようにするなどの対策を全病棟で取っています。おかげで転倒転落事故が減り、大ケガにつながるような事例も防げるようになりました。看護師の日々の努力の賜物だと思っています。

桜井:呼吸器内科という立場から、重大な医療事故につながりかねない酸素療法や人工呼吸器の安全対策も行なっています。呼吸ケアサポートチームでは回診の際、人工呼吸器の動作・設定確認はもちろんのこと、病室の環境整備のアドバイスをすることがあります。たとえばカーテンのそばに人工呼吸器がおいてあった場合、病棟スタッフにベッドや人工呼吸器の位置移動等の病室のレイアウト変更を依頼します。これは、人工呼吸器の空気の取り込み口をカーテンでふさいでしまわないようにするためです。
また、酸素ボンベを使っている患者さんが病棟から検査に行く場合、病室に戻ってくるまで十分な酸素があるかどうかが一目でわかるような早見表を作成して、ボンベに取り付けています。看護師がその表を確認してから検査室へ患者さんをお連れすることで、移動中に酸素がなくなりそうになって慌てることがなくなりました。新人看護師の研修では、この表の見方を教えてもらっています。

瀬戸山:すごくいいものを作ってくれて、助かっています。

患者さんへの安全な医療の提供に加えて、病院職員の安全の確保とはどういうことでしょうか?

奥村:患者さん側と医療を提供する側との間に、ギャップが生じることも少なからずあります。残念ながら、ご不満や苦情をお寄せいただくこともあるのですが、その際、「いかに患者さんに安全な医療を提供できるか」という原点に立ち返って問題点を探り、職員が安全な医療に専念できるようバックアップする必要があります。

伊丹:例えば、手術の前に患者さんに記入していただく同意書・承諾書は、医師が正しいプロセスを踏んで患者さんにご説明し、ご納得いただいた上で行った医療行為であることを確認できるものです。患者さんを守るためのツールであると同時に、万が一、何か問題が起こったときは病院全体で対応し、医師個人が責められることのないようにするためのシステムでもあります。トラブルを未然に防ぎ、医師や看護師が医療に全力を注げるようバックアップすることが、結果的に患者さんの安心・安全にもつながると思います。

山﨑:私は医事課の職員ですので、問題が発生した場合、患者さんと病院との間に入って折衝を行っています。予防というより、事後の対応がおもな業務ですが、日頃からインシデントレポートに目を通して情報収集しているため、いざというときに役立ちます。

奥村:外来でも、何かありそうなときは、すぐに対応できるように近くで待機してくれているので心強いです。

室井:私は総務課なので、業務上患者さんと直接接することは多くはありません。現場で発生している状況を統計等データ提供により形で示すことで多職種の医療従事者の方に、各現場で発生している状況を把握してもらい、インシデント・アクシデント発生の予防に努めてもらうのが役割だと考えております。

キャラクターの活用やイベントの実施で、安全対策を身近なものに

西神戸医療センターならではの安全への取り組みはありますか?

伊丹:マスコットキャラクターを使って、5Rを推奨していることでしょうか。

奥村:5RのRとは、「Right=正しい」の意味です。看護師は病室の巡回前に、処方箋を見ながら薬剤名などを声に出して、親指(正しい時間か)、人さし指(正しい患者さんか)、中指(正しい用法か)、薬指(正しい薬剤か)、小指(正しい用量か)と、5本の指を使って指さし確認をしています。この指さし呼称を取り入れた確認を推奨するために作られたのが、「しょうこちゃん」というキャラクターです。

津山:このほか、昨年から「安全対策自慢フェスティバル」というイベントを実施しています。各部門での安全対策への取り組みを1枚の模造紙にまとめて院内に掲示し、アピールするとともに、投票と表彰を行いました。自分たちの強みを再確認でき、楽しく安全対策を考える好機になったのではないかと思います。今年、第2回を開催することができましたので、今後も継続していきたいと考えています。

坂本:インシデントレポートは何かが起きてから記録するものですので、イベントをきっかけに自分たちが予防できていることを見える化できたのがよかったと思います。
6階西病棟では、お子さんがベッドから落ちないように、こんな取り組みをしていますということを見ていただけるよう、病棟に持ち帰って掲示しました。ご家族に少しでも安心してもらえたら嬉しいですね。

奥村:例えば、ベッド周りの荷物を片付けておく、消灯前にトイレに行っておくように声掛けをする、理学療法士さんと一緒に転倒しにくい靴を選んで売店で販売してもらうなど、入院患者さんが転倒転落事故を起こさないよう、私たち看護師はものすごく気を使っていますが、先生方や患者さんご自身、ご家族にも気をつけていただきたいですね。看護師に協力していただいて、一緒に安全対策に取り組んでいただけると有難いです。

ありがとうございました。

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