MENU

PUBLIC RELATIONS広報

にしこうべ vol.18 2018年08月
最新のテクノロジーを用いてがん診療に挑む、PET-CT検査チーム

がんの画像診断に不可欠な「PET-CT」が本格稼働

西神戸医療センターでは、今年2月に待望のPET-CTが導入され、4月からは地域の医療機関からの検査受付も開始するなど、神戸西地域をはじめとする周辺住民の皆様のがん医療ニーズにお応えしています。そこで今回は、がん診療の重要な画像診断法であるPET-CTの導入に、準備段階から尽力されたPET-CT検査チームの皆さんにお話を伺いました。

(お話は、放射線診断科の桑田部長、平林副医長、放射線技術部の鈴木主査、中島技師、放射線科看護師の瀧澤主任、延本看護師)

10年来の悲願だった検査機器「PET-CT」の導入

PET-CTとは、どういう検査でしょうか?

桑田:PET(Positron Emission Tomography/陽電子放射断層撮影)とは、陽電子という放射線を出す放射性薬剤を投与し、その後、体内で代謝される過程を体外から観察する検査法です。従来のガンマ線を出す放射性医薬品を用いたシンチグラフィよりも高精度な画像を得ることができます。そのPET装置に、細かい形態や病変の正確な位置がわかるCT装置を組み合わせたものがPET-CTで、20分程度で全身をくまなく検査できるのが特徴です。半減期、すなわち有効期間の短い薬剤を用いるため、検査にあたっては様々な制約があります。

平林:現在PET-CTは、FDGというブドウ糖に近い成分の薬剤を用いたFDG-PET検査が一般的です。「がん細胞は正常細胞に比べ3~8倍のブドウ糖を取り込む」というがん細胞の性質を利用して、ブドウ糖代謝でがんを見つけます。腫瘍の大きさや場所の特定、良性、悪性の区別、がんの転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されており、非常に有効な検査方法と言えます。副作用はほとんどありません。

PET-CT導入までの経緯を教えてください。

高栁:当院の診療圏は、神戸市西部と明石市・三木市の一部で、人口は約70万人ですが、これまでPET-CTは、神戸市では中央区以外に導入されていませんでした。がんを扱う診療科からは、10年程前から導入を要望されており、その声は年々高まっていました。PET診療を行うには、所定のPET研修を終了し、認定を受けた医師および放射線技師が必要です。そこで私たちは、いつPET-CTが導入されても対応できるよう、PET認定セミナーの受講やPET核医学認定医の資格取得などで、PET-CTの専門知識や安全管理、検査方法、読影を学び、準備してきました。
また、徐々に導入しやすい環境も整ってきました。当院は、もともと救急医療とがん医療に注力していましたが、2011年に「兵庫県指定がん診療連携拠点病院」に指定され、2013年には院内に様々な職種から構成されるがん総合診療部が設立されました。それらの活動が実を結び、2015年には「国指定地域がん診療連携拠点病院」に指定され、これによって診療報酬面での課題もクリアできました。地域がん医療の中核的な役割を担う存在となり、PET-CT導入の機運が熟したのです。2018年2月、念願だったPET-CTの導入が実現し、患者さんに中央区など遠方の病院まで検査に行っていただく必要がなくなりました。4月より地域医療機関からの検査依頼は地域医療室が窓口となって予約受付を開始し、なるべく最短で検査が受けられるよう手続きさせていただいております。

PET-CT導入にあたって、どのような準備をされたのでしょうか?

鈴木:PET認定研修セミナーを受講して認定試験を受け、修了証を取得しました。勉強以上に苦労したのは、機械導入のための準備でした。放射線を出す薬剤を扱う特性上、放射線技師の私たちが中心となって、法律的な届け出や施設設計から携わらせていただきました。

中島:私もセミナーを受講して、修了証を取得しました。2日間の研修で、核医学の基礎や専門知識、法的規制、安全管理を学ぶのですが、核医学を本格的に勉強するのは学生のとき以来だったので、事前に成書を買い求めて読むなどして臨みました。PET-CTを導入し、運用していくためのプロトコールを構築するのは難しい業務でしたが、良い経験になりました。

平林:私は既にPET核医学認定医の資格を取得しており、当院でのPET-CT導入にあたって、先端医療センターPET診療部から異動し、準備に携わらせていただきました。

桑田:各自の勉強や資格取得のほか、がんを扱う診療科のスタッフの勉強会はもちろん、職員全員の理解と知識を深めるべく、院内全体の勉強会も複数回行っています。PETの分野でご活躍の先生にも講演にお越しいただきました。

延本:私は核医学診療看護師の資格を取得しました。また、PET-CT運用検討会のコアメンバーの一人として、放射線科医や放射線技師の方々と協力しながら検査マニュアルなどの作成も行いました。PET-CTに携わったことがないスタッフがほとんどで、手探りの状態からのスタートでしたが、神戸市立医療センター中央市民病院のPET-CT施設見学に行かせていただき、業務内容や今後の課題を明確にすることができました。

瀧澤私は、昨年4月に放射線科看護師の主任として異動してきました。延本さんをはじめ、放射線科の看護師業務の管理とバックアップをしています。当初はPET-CTに従事できる看護師が3名でしたが、PET-CT運用検討会の皆さんがミーティングを重ねてわかりやすいマニュアルを作り上げてくださったおかげで、現在は10名に増えました。

患者さんはもちろん、医療従事者にも安全な検査を

検査の際、気をつけておられることは?

中島:当院に導入されたのは、画像の解析度を上げるTOF(Time Of Flight)とPSF(Point Spread Function)という最新の機能が両方搭載された機種で、より小さな病変を検出できる高画質のPET-CTです。精密機械ですので、管理と調整には非常に神経を使います。

鈴木:とてもデリケートな機械で、温度や湿度の管理に加えて、日々ゆらぎがある感度を安定させて数値にばらつきが出ないよう調整しなければならないのですが、この作業に毎朝1時間を要しています。

延本:薬剤の投与については、必ず看護師と放射線技師がダブルチェックを行い、安全かつ正確に検査できるよう努めています。検査に用いる薬剤は有効期間が短いため、検査の日時に合わせて製薬会社から届けていただきます。患者さんが検査時間に遅れて来られたり検査当日急にキャンセルされたりすると貴重なお薬が使えなくなってしまうので、決められた時間内に正確に投与できるよう、時間管理が重要です。また、看護師の被ばくを低減するために、薬剤の投与後はできる限り患者さんとの接触を避ける必要があります。薬剤を投与してからPET-CT撮影を行うまで、1時間ほど安静に待機していただくのですが、その際の過ごし方や帰宅後の過ごし方についての説明は、できる限り薬剤の投与前に終えるようにしています。

瀧澤:帰宅されてから患者さんが困らないように、ご自宅でどのような生活をされるのかを意識して、説明の仕方を変えるよう心がけています。患者さんの反応を見て理解度を測り、必要に応じてご家族に説明することもあります。投与された薬剤は12時間くらいで体外に排出されたり効果がなくなります。それまでの間、患者さんからはごく微量の放射線が出ているため、帰宅後に特定の人のそばに居続けないよう注意していただきます。特に乳幼児は放射線に対する感受性が高いので、お子さんと一緒に過ごしたり寝たりはしないようお願いしています。また、トイレの際は飛び散らないように座ってする、よく手を洗うなど様々な制約があるのですが、予約の際と検査の前にしっかりご説明し、注意事項を書いた用紙もお渡ししています。

今後の課題や目標をお聞かせください。

鈴木:現在はFDGというがんに特化した薬剤を扱っていますが、将来、FDG以外の薬剤、たとえば現在保険適応申請中の認知症検査の薬剤などが認可されたときには、当院でも対応できるようにしていきたいと思います。

中島:直接、患者さんとお話する機会が多いのですが、「今まで遠くの病院まで検査に行っていたのが、ここでできるようになって良かった」という声をたくさん聞くことができ、私たちも嬉しく思っています。装置の管理、調整をしっかりと行い、安定稼働を続けていきたいと思います。

平林:引き続き、見落としがないよう、ていねいに画像を読むことを心がけます。病気の診断には様々な画像が使われており、なかでもFDG-PETは特殊な検査ですが非常に有効な検査方法です。その有用性をもっと多くの方に知っていただけるよう、地域にお住いの皆さんに講演会を行うなど、啓発活動にも力を入れていきたいと思います。

延本:患者さんはもちろん、医療従事者にとっても安全な検査を心がけたいと思います。PET-CTでは、患者さんへの説明、静脈ルート確保など、正確な時間を刻んで行わなければならないため、患者さんの基礎疾患や年齢、性格などを理解して対応する熟練度が求められます。看護師一人ひとりが確実にできるようになるよう、サポートしていきたいと思います。

瀧澤:管理者の立場として付け加えるとすれば、今後、もしヒヤリ・ハットの事例が起こることがあれば、より安全で正確な検査が行えるよう、このチームで改善していきたいと思います。

桑田:がん診療については、診断から治療まで当院で完結できるようになりました。地域住民の皆さんに安心、信頼して受診していただけるよう、今後も努力してまいります。

ありがとうございました。

一覧へ戻る

ページトップヘ
ページトップヘ