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PUBLIC RELATIONS広報

にしこうべ vol.24 2022年07月
医師の負担を減らし、診察や治療に専念できる環境づくりに不可欠な「医療クラーク」

ドクターズクラークの同席で円滑な診察を

「医療クラーク(医師事務作業補助者)」とは、医師の指示のもとで診察業務に関わる事務を補助する専門職です。
私たちが医療機関を受診すると、カルテや処方箋の作成はもちろん、検査や入院の手配、診断書や主治医意見書の作成など、多くの事務処理が行われています。これまで医師が行ってきたこれらの業務を医療クラークが代行することで、医師は診察や治療に専念でき、診療が円滑に行えるようになります。
数年前から医療クラークの業務拡充に取り組んできた西神戸医療センターでは、よりよい医療サービスの提供を目的に、昨年「医療クラーク室」を設置しました。今回は、医師のかたわらで業務を行う「ドクターズクラーク」の皆さんにお話を伺いました。

(お話は、医療クラーク室医事係長の中水義昭さん、ドクターズクラークの神田千絵子さん、山田麻惟子さん、向政子さん、渋谷邦子さん)

医師のサポートを行い、待ち時間の緩和にも貢献

医療クラークの内訳と役割を教えてください。

中水:当院での医師事務作業補助者としての職種は4種類です。現在、「メディカルクラーク」5名、「がん登録実務者」2名、「NCD登録実務者」2名、「ドクターズクラーク」が12名在籍しています。2008年11月から、「メディカルクラーク」による診断書などの文書作成、「がん登録実務者」や「NCD登録実務者」による登録業務を行ってきました。
がん登録とは、国の指針に基づいて、がん患者さんの治療の経過に関する情報をデータベースに入力する業務です。集計・分析された情報は、国内のがんの動向の把握や原因解明に利用され、国の医療対策にも用いられます。NCD登録は、医師が行う手術件数や治療情報をデータベース登録します。国全体の情報を集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者さんに最善の医療を提供することが可能になります。
おもに文書作成を行う「メディカルクラーク」に対して、「ドクターズクラーク」は診察室に入って医師の横で電子カルテ入力などのサポートを行います。当院では2018年10月から、「ドクターズクラーク」を採用しました。診察の待ち時間の長い診療科や先生方から要望のあった診療科からスタートし、少しずつ対象診療科を増やしているところです。

ドクターズクラークになった経緯と、担当している診療科を教えてください。

神田:私は20年間医療事務をしていました。以前に勤めていた病院で医事課に在籍していた際、先生についてカルテの代行入力等をするように言われました。はじめは戸惑いましたが、やってみると自分に合っていたのか非常に楽しくて、天職を見つけたと思いました。当院にはスキルアップ目的で来ました。今年4月にドクターズクラークのリーダーになり、循環器内科を担当しています。

山田:私は職業訓練の学校で医療関係に興味を持ち、研修で当院に来ました。大きな病院で、各部署の皆さんのチームワークがよく、女性が活躍している職場なので、私もその一員になりたいと思って就職しました。ドクターズクラークができると聞いて志願し、3年半になります。現在は呼吸器内科の担当です。

渋谷:未経験でも一から教えてもらえ、仕事につなげることができるというので、福祉関係の仕事から転職しました。今年2月に入職し、眼科でドクターズクラークをしています。今一番多いのは、処方箋の作成です。

向:去年、他の医院から異動してきて、8月から呼吸器外科でドクターズクラークをさせていただいています。長い間、医療機関で働いてきましたが、おもに受付業務でした。異動でドクターズクラークをやってみないかと言われたときは、パソコン操作に苦手意識があり、不安でした。しかし回数を重ねていくうちに、先生が「おかげで診察に集中できるようになったよ」と声をかけてくださることが増え、先生から教わることも多いので、今はやりがいを感じています。

渋谷:私はまだできることが少ないのですが、スムーズに診察が終わって、すべての書類が揃っている状態に持っていけると、「よし、いけたな」と手応えを感じます。

山田:毎日忙しいですが、充実しています。みんなで、「今日も一日、外来お疲れさま」って言える雰囲気が好きですし、達成感があります。先生が患者さんの話を聞いて、心のケアまでして癒す様子を間近で見ていると、すごいなと思います。

向:私たちがいることで診察がスムーズに流れるようになったと言っていただけるのは、最高の誉め言葉だと思います。

医師が患者さんの顔を見て話し、診察に集中できるようになった

ドクターズクラークがいることで、患者さんにどんなメリットがありますか?

神田:電子カルテの導入後、先生が患者さんの方を見て診察する時間が短くなっていました。私たちが横で電子カルテの入力を行うことで、先生は患者さんと向き合い、患者さんの顔を見てお話ができるようになったので、患者さんにとってはすごく安心感があると思います。

向:先生の事務負担が軽くなり診察に集中できることで、患者さんは待ち時間が減りますし、先生が自分のことをよくわかってくれているという信頼につながるのではないでしょうか。

ドクターズクラークに求められる知識・スキルはなんでしょうか?

向:パソコン操作は慣れれば大丈夫なので、スキルよりも先生とコミュニケーションを取れることの方が必要ではないでしょうか。

神田:たしかにコミュニケーション能力と、いろんなところに気配り目配りできることが重要ですね。

渋谷:私は医療機関で働くのがはじめてだったので、最初は医療用語も診察の流れもわからず、ドキドキしていました。研修や実際に外来の診察に入って業務にあたるうちに、医療知識は覚えられます。先生がいるので、わからないことはその場でスッと聞けて、次につなげていけるようにすることが大事だと思います。

渋谷:とくに資格は必要ないので、未経験者でもドクターズクラークになれます。当院では入職してから20時間の座学で徹底的に学び、あとの12時間は現場研修を行っています。

当院がモデルケースとなり、全国に仲間が増えることを期待

医療クラーク室を設置したことで、見えてきた課題はありますか?

中水:課題は環境整備と人材育成ですね。医療クラーク室を設置して先生に室長になっていただいたことで、先生が先頭に立って院内での啓蒙活動を行い、要望や問題点を提示しながら推進してきました。ゆくゆくは、すべての診療科にドクターズクラークを配置できればと考えています。体力的にも精神的にもなかなかハードなところでお仕事をしていただくので、バーンアウトしないような環境を作っていかないといけないと思います。とくに最初の1ヶ月をしっかりサポートして、未経験で来られても、その時期にどれだけ知識を身につけてもらうかが重要と考えています。

山田・神田:私たちが入った頃は、医療クラーク室もマニュアルもなくて、現場で先輩から教えてもらうことがすべてでした。

神田:医療クラーク室の設置は、私たちの上に誰がいるのか組織が目に見える形となり、安心感につながりました。何か困ったときはどこに相談したらいいのかも明確になりました。
現在は、私たちが中心となって、それぞれの診療科でマニュアル整備や新人教育プランが大分でき上がってきたところです。今後は経験年数の多い中堅スタッフから順番に教育係になって、やがてはみんなが新人教育をできるようになり、新人が育って教える側になるというサイクルが完成すればいいなと思います。人に教えることで自分自身の勉強にもなりますから。

今後の目標をお聞かせください。

向:今は1つの診療科しかわからないので、自分がスキルアップしていくために、違う診療科の業務も覚えていきたいです。こういうご時世なので、お休みする方がいたら誰かが代わりに入れるという体制づくりも大切です。新人さんだけでなく、誰がどの診療科に入ってもわかるようにしていきたいと思います。

渋谷:私はやっと3ヶ月経ったところで、まだ経験が浅いのですが、これから年月を重ねて頼られる人になりたいと思います。

山田:私はこの病院が好きなので、長く働きたいと思っています。みんなが働きやすい環境づくりのお手伝いができると嬉しいです。

神田:全診療科にドクターズクラークがつけるようにするのが目標です。たくさんの人にこの仕事に興味を持っていただき、年齢や経験に関係なくチャレンジしてもらい、仲間が増えることを期待しています。さらにその先には、まだドクターズクラークを取り入れていない病院にも興味を持ってもらって、当院が大規模病院のモデルケースになれるといいですね。「西神戸医療センターはすごいな」って言われるくらいになりたいです。

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