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PUBLIC RELATIONS広報

にしこうべ vol.25 2022年11月
患者さんの入院生活の不安を和らげ、心のケアに取り組む「精神科リエゾンチーム」

入院患者さんと病棟スタッフを支える黒子役

「リエゾン(liaison)」とは「音がつながること」を意味するフランス語で、医療や災害支援の現場では「連携」「つなぐ」「橋渡し」などの意味で使われている言葉です。
西神戸医療センターでは、平成24年(2012年)9月に「精神科リエゾンチーム」が発足。主治医や担当看護師など病棟スタッフと連携して、身体の病気に伴って起こるさまざまな心理的な問題への支援を行い、入院中の患者さんが少しでも快適に過ごせ、治療がスムーズに行えるようサポートしてきました。
今年で活動10周年を迎えた「精神科リエゾンチーム」の皆さんにお話を伺いました。

(お話は、北垣副院長、精神科医の奥小路先生・内田先生、臨床心理士/公認心理師の川添さん・谷口さん、精神看護専門看護師の山田さん、薬剤師の宮下さん、作業療法士の井上さん・渡邊さん)

病棟と協力し、精神科の専門医療が必要な患者さんを早期発見してケアを実施

精神科リエゾンチームの活動内容を教えてください。

奥小路:リエゾンチームは、精神科医師、看護師、心理士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカー、各病棟のリンクナースなど約30名で構成され、それぞれの専門性を活かしたチーム医療を行っています。当院には精神科病棟がありませんので、内科系・外科系の病気で入院された患者さんの心のケアがメインです。主治医の先生が、この患者さんには精神科の専門医療が必要だと判断された際に、患者さんの同意を得た上で精神科を受診されます。1日に3~10件の依頼があり、内田先生と2人で対応しています。

内田:毎週水曜日のカンファレンスでは、リエゾンチームのメンバーが集まり、介入患者さんに関する情報共有や今後の支援などについての検討を行っています。当チームに紹介となる患者さんの7~8割は「せん妄」という病態を抱えています。せん妄は、病気や薬など、何らかの理由で一時的に意識障害や認知機能の低下などが生じる精神状態のことです。せん妄が長期化すると、特に高齢者の方においては、認知症につながってしまう可能性もあります。当チームでは、せん妄の早期発見と適切なケア、対応がなされるよう、多職種チームで協働しながら、患者さんやそのご家族の支援を行っています。

北垣:私は今年の4月に着任したのですが、いろんなカンファレンスがある中で、どこに参加すればよいか前院長に相談したところ、ぜひリエゾンチームにとご推薦いただきました。はじめはオブザーバー的な立場で、カンファレンスと病棟回診をしている様子を見せていただいて、心の問題を抱えている患者さんがこんなにたくさんおられるとは想像していなかったのですごく驚きました。
せん妄の症状のほか、認知症で関わり方が難しい患者さんについても病棟から相談があがってきます。患者さんも困ってらっしゃるし、病棟の看護師さんもどうしたらいいか困っている。チーム一丸となってそれらを解決しているので、すばらしい活動だなと思いました。手元の資料によると、2021年度の新規介入件数は1,030件で、月平均70~100件になります。

それぞれの専門分野で、どのようなアプローチをしているのですか?

井上:私たち作業療法士は、手術後になるべく早くご自身で身の周りのことができるよう、できるだけ早くリハビリをおすすめし、昼間の覚醒を促す目的も含めてリハビリに取り組んでいただいています。多職種がさまざまな介入をすることが良いと言われているので、チームで情報共有をして必要なサポートがあれば担当者に伝えます。

山田:病棟の看護師は細かな環境調整を行っています。たとえば、朝は病室のカーテンを開ける、夜間は真っ暗にしすぎると不安を感じる患者さんがいるので照明を調整する。せん妄の発症要因はさまざまで、体の不具合、例えば発熱がきっかけになることもあるので、発熱が続かないよう早めに解熱剤を投与するなどです。入院中は心地よい刺激がなく、採血や点滴といった嫌な刺激のほうが多くなってしまいます。そこで、心地よい音楽を流したり、いい香りがするものを置いたり、手足や背中を温めるなど、お薬以外にできるアプローチ等について、病棟の看護師と共に考えて実践しています。

川添:リエゾンチームは、黒子のような存在だと思っています。不安やイライラ、気分の落ち込みなど、主治医や病棟の看護師さんたちは感度良く患者さんの声を拾って下さっています。心理士も、カンファレンス等で相談検討しながら、ご希望やニーズに応じて、直接的、もしくは間接的に心理面の支援に関わらせていただいています。患者さんご自身のタイミングやペースを尊重しながら、ゆっくりお話を伺ったり、遊びや音楽、お絵かきなど様々な表現活動を通して非言語で表現されるものを汲み取ったり、手法は様々ですが、心理的な負担を減らし、ストレスを和らげ、入院生活の質を少しでも良く出来るよう、身体の治療に取り組めるようサポートしています。

宮下:私は薬剤師としてリエゾンチームのカンファレンスに参加し、ここで得た情報を各病棟の薬剤師に橋渡ししています。患者さん1人に対して多職種のスタッフが介入することで、色んな視点からの情報をもとに患者さんを支えることができますし、わからないことはすぐ聞ける環境なので、チーム活動のあり方としてすばらしいと思います。
睡眠リズムが乱れて、昼間に寝て夜起きてしまう患者さんにせん妄の症状があると、点滴やドレーンを自己抜去してしまうことがあります。看護師さん、心理士さん、作業療法士さんは、昼間の覚醒を促す目的も含めてアプローチしておられます。私たちは、患者さんに処方されている薬の飲み合わせや副作用を確認し、一緒に患者さんの安全を守っていきたいと思います。

身体拘束の少なさは、長年の努力の積み重ねと習慣化によるもの

チームでの活動を通して、どのようなことを感じていますか?

内田:西神戸医療センターは第二次救急医療施設であり、緊急入院や手術を余儀なくされる患者さんがほとんどです。患者さんの入院生活におけるストレスや苦痛が少しでも軽減されるよう、チームメンバーで十分コミュニケーションをとりながら、日々取り組めていると思います。当院の平均在院日数も11日と、患者さんと関われる期間が短く、もっと何かできたのではないかと思うこともありますが、患者さんが元気になって帰られる様子を見るとやりがいを感じます。

奥小路:介入件数が多いということは、それだけ院内でリエゾンチームのことが認識され、信頼されているのかなと、恐縮かつ有難いことだと感じています。身が引き締まる思いで奮闘していますが、介入件数が多くなってくると1人ひとりに深く関われていないのではという葛藤もあります。そういうときでも、自分だけで抱え込むのではなくチームみんなで患者さん1人ひとりを支えていく形ができているので心強いですね。

渡邊:作業療法士としては4年目で、今年からこの病院に勤務しています。チームに配属されるのはリエゾンチームがはじめてです。前に勤めていた病院では病棟の患者さんとの関わり方で困ることが多くありましたが、このチームに入ったことで相談できる機会が増え、学ばせてもらうこともたくさんあります。チーム医療の良さを実感しています。

谷口:私も今年4月からの勤務で、最近チームに参加させてもらうようになりました。患者さんの状態を皆さんで共有することはとても大事なので、近くでみてくださっている看護師さんの情報をもとに、どういう支援ができるのかを考えて提供していくリエゾンチームの活動には意味があるなと感じています。

山田:当院は急性期病院なのでやることが多く、治療が最優先となると、忙しさで患者さんへの声かけや心のケアというのは忘れられがちな部分ではあります。しかし当院のスタッフには、心のケアが根付いていると実感しています。これは、阪神・淡路大震災後、多くの人の心のケアにあたられた精神科の先生方、スタッフ全員が築いてくれたものだと思います。私は18年間この病院しか知らないのですが、西神戸医療センターで働いているということが一番のやりがいになっています。心のケアが特殊なものではなく、日々当たり前に行われているのが、身体拘束が少ないという結果にもつながっているのではないでしょうか。

ドクターズクラークに求められる知識・スキルはなんでしょうか?

向:パソコン操作は慣れれば大丈夫なので、スキルよりも先生とコミュニケーションを取れることの方が必要ではないでしょうか。

神田:たしかにコミュニケーション能力と、いろんなところに気配り目配りできることが重要ですね。

渋谷:私は医療機関で働くのがはじめてだったので、最初は医療用語も診察の流れもわからず、ドキドキしていました。研修や実際に外来の診察に入って業務にあたるうちに、医療知識は覚えられます。先生がいるので、わからないことはその場でスッと聞けて、次につなげていけるようにすることが大事だと思います。

渋谷:とくに資格は必要ないので、未経験者でもドクターズクラークになれます。当院では入職してから20時間の座学で徹底的に学び、あとの12時間は現場研修を行っています。

活動10周年を迎えて、今後の目標は?

川添:専従心理士としてチームの立ち上げから関わってきました。チームでは毎年重点的に取り組む目標があるのですが、今年度は身体拘束最小限化も取り上げています。先ほどお話に出たように、もともと当院では身体拘束は少ないのですが、患者さんの人権と安全を第一に考えて、知識の確認やディスカッションを行っています。

井上:私は他の病院も経験していますが、確かに当院は身体拘束が非常に少ないと感じています。長年の活動の中で看護師さんができるだけ抑制をしないような対応をしてきて、それが習慣化してこういう結果につながっているんだと思います。こういった部分はなかなか見えず、外部から感謝や評価をされることは少ないのですが、患者さんが心穏やかに過ごして退院してくれればそれでいいんだと思うしかない。まさに黒子の役割を果たしているんだと思います。

川添:評価と言えば、今年度の優秀職員表彰で、リエゾンチームが優秀職員賞(団体)をいただきました!

北垣:リエゾンチームに対する院内の評価は高く、病院長はじめ皆さんからチームの活動によって助かっているという声を聞いています。当院は地域がん診療連携拠点病院でもありますが、認定要件に「倫理的、社会的な問題を検討するためのカンファレンスを月1回以上開催し、カルテに記録を残すこと」という項目が新たに加わりました。そういうことが明文化されたということは、日本の社会が倫理的な問題、社会的な問題を重要視しているんだと実感し、今後はより一層、皆さんと一緒にリエゾンチームの活動を広げていきたいと思います。
一方で、他の病院でも心の問題で困っている患者さんや看護師さんは多いはずですが、リエゾンチームがある病院はまだまだ少ないようです。より多くの病院がリエゾンチームを導入し、臨床(医療現場)のスタンダードになるよう願っています。

ありがとうございました。

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