歯科での標榜科名である一般歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科のうち、当科は歯科口腔外科のみを標榜しています。口腔外科疾患に対する手術治療が主体となりますので、受診される場合は地域の医科・歯科医院からの紹介状をご持参ください。地域医療機関から事前にFAXにてご予約いただくことも可能です。事前予約により診察待ち時間が短縮されますので、ぜひご活用ください。初診の受付時間は月曜日から金曜日の午前8時45分から11時までとなっています。
紹介状を持参されない初診患者さまは、救急を要する場合(顎顔面外傷、重症歯性感染症など)以外は受付できませんのでご了承ください。
神戸市西地域の基幹病院の歯科口腔外科として、2名の口腔外科専門医が、顎口腔腫瘍、顎顔面外傷、重症歯性感染症、顎奇形、顎関節疾患、唾液腺疾患などの手術を必要とする口腔外科疾患や、がん患者さまへの口腔機能管理、栄養サポートチームや緩和ケアチームなどの院内医療チームへの歯科医療の提供を中心に診療を行っています。むし歯や歯周病治療、義歯作成などの一般歯科処置につきましては、地域の歯科医院にての治療をお願いしています。
また、歯科インプラントおよびそれに関連した治療は原則として行っておりません。
日本口腔外科学会認定研修施設
智歯(親知らず)は萌出スペースがなく埋没したり、斜めにはえてくることがよくあります。その場合、周囲の歯肉が腫れたり(智歯周囲炎)、むし歯になるため抜歯をする必要が生じます。特に、下顎の埋伏智歯では顎骨内の神経・血管と近接していることが多く、専門的な知識と手技が要求されます。
多くの症例では、局所麻酔下の日帰り手術で対応いたしますが、抜歯に対する恐怖心の強い方や左右一括の抜歯をご希望される場合は、全身麻酔下の入院手術も可能ですので、お気軽にご相談ください。
ー 歯科槽神経の走行
ー 歯根部の形態
顎骨には、歯根嚢胞や含歯性嚢胞などの嚢胞性疾患や、エナメル上皮腫に代表される歯原性良性腫瘍を生じる場合があります。多くは無症状に経過し、ある程度の大きさになると顎部の膨隆をみとめたり、細菌感染により激しい疼痛と顔面の腫脹を伴う場合があります。偶然に歯科用レントゲンで発見されることもあります。これらの病変は発育性に顎骨内で増大しますので外科的に摘出を行う必要があります。嚢胞摘出術時には手術用顕微鏡支援下での歯根端切除術を応用することで、顎骨嚢胞の原因歯や隣在歯を可能な限り保存するように努めています。前歯、小臼歯のみならず大臼歯への適用も可能です。
手術前
手術後
手術用顕微鏡を使用して逆根管充填
口の中にもがんが発生することがあります。WHOの分類によれば口腔潜在的悪性疾患(oral potentially malignant disorders)には白板症、紅板症、口腔粘膜下線維症、リバーススモーキングによる口蓋角化症、慢性カンジダ症、扁平苔癬などが含まれます。これらは、専門医による診察と病理組織検査による診断が必要になります。口腔がんへの進展が予想される口腔白板症、紅板症については積極的に切除を計画します。口腔がんと診断された患者さまは、耳鼻咽喉科・頭頚部外科に治療依頼を行います。
ヨード染色を行い不染色範囲の確認
ヨード不染色部分を含み病巣部を切除
創部は単純縫縮
アゴの大きさ、形および位置の異常により、歯のかみ合わせが大きくずれている場合は、顎変形症という病気の可能性があります。うまく噛めない、口が開きにくい、容貌が気になる等でお悩みかもしれません。歯の矯正治療だけでは、安定したかみ合わせが得られない、顎関節症状が改善しない、また整容面の改善が見込めないなどの場合に、歯の矯正治療とアゴの骨に対する外科手術を組み合わせた『外科的矯正治療』により治療が可能になっています。
外科的矯正治療は、近隣の矯正歯科医と口腔外科が連携し、3〜4年かけて治療を行います。当科は外科手術を担当し、7〜10日ほど入院していただきます。正常な口腔機能の回復と審美面にも配慮し、患者さんおよび矯正歯科医とともにより良い治療法を模索し、最良の結果が得られるように努力しています。詳しくは、矯正歯科医もしくは当科でご相談ください。
顎顔面外傷は、皮膚や粘膜などの軟組織の損傷やアゴの骨折や歯の脱落・破折などがあります。アゴの骨折の治療には保存的治療と外科的治療があります。保存的治療は手術を行いませんが、顎間固定(口が開かないように縛る)を行い、しばらく流動食を摂取します。治療期間が長くなる傾向があります。外科的治療は入院手術が必要ですが、基本的には顎間固定は不要で、術翌日から粥食を摂取できます。保存的治療に比べて機能回復が早いです。患者さんの状態やご希望に応じて最良の治療法を選択します。顎顔面外傷の中で難易度の高い下顎骨の関節突起骨折に対しても治療を行なっています。
診断:左側関節突起基底部 転位骨折
がんの骨転移や多発性骨髄腫、骨粗鬆症の治療のために投与されるビスホスホネートやデノスマブに関連した顎骨壊死(薬剤関連性顎骨壊死)症例が、近年増加傾向にあります。いったん、発症すると難治性であり治療期間が長期に及ぶことも少なくありません。これら薬剤による治療を受けられる際には、かかりつけの歯科医院で検診を受けられ、あらかじめ必要な歯科処置を受けておかれることをお勧めします。
顎骨壊死の治療時には、生活の質(QOL:Quality of life)を維持しながら治癒をめざすべく、最善の治療を計画することを心掛けています。
2021年3月より顎変形症外来(毎週水曜日午前)を開始いたしました。顎変形症に関連する初診患者さんの紹介枠としてご利用いただけます。初診時に一般的な顎矯正手術や入院に関してご説明いたします。
なお、患者さんのご都合で水曜午前の受診が難しい場合は、通常の初診枠でも対応いたします。
2021年3月より歯科用CTが撮影できるようになりました。病変に応じて医科用CTと歯科用CTを使い分けています。歯科用CTについては当日撮影が可能です。
外来に手術用顕微鏡を導入し、入院手術以外でもマイクロ下での歯根端切除手術を行えるように整備しました。手術適応の症例がございましたらご相談ください。
親知らずの抜歯など、日帰り手術につきましては、初診時の即日手術は行っておりません。検査と手術内容についての説明し、同意をいただいたうえで、外来手術枠の予約を取らせていただいております。手術時は新型コロナウイルス感染症対策を徹底しております。当日の患者さまの体調によっては手術を延期する場合もございますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
がん患者さまへの周術期口腔機能管理につきましては定期的にオープンカンファレンスを開催し、歯科医院の先生方と緊密に連携しています。入院前および入院後はかかりつけ歯科で管理を行っていただき、入院中または外来化学療法中は院内で対応しています。昨年度は37件の周術期歯科医療連携を行いました。
診察室内のエアロゾル浄化のためのHEPAフィルター空気清浄機の設置、歯科診察室のカーテン隔離などの感染対策に加え、配管の消毒が可能な新型の歯科診療チェアーを導入いたしました。歯牙切削時に使用する水が浄化されるため、より清潔な状態で歯科処置を行うことが可能です。
いわき ふとし
岩城 太
平成3年 卒
役職 |
歯科口腔外科部長 |
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専門分野 |
口腔外科(特に顎口腔腫瘍・感染症) |
資格 |
日本口腔外科学会 専門医・指導医 |
ひらい ゆうぞう
平井 雄三
平成22年 卒
役職 |
歯科口腔外科医長 |
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専門分野 |
口腔外科(特に顎変形症・顎顔面外傷) |
資格 |
日本口腔外科学会 専門医・認定医 |
たかはし じゅんぺい
髙橋 潤平
令和2年 卒
役職 |
歯科口腔外科専攻医 |
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専門分野 |
口腔外科 |
初診患者数 | 2,789人 |
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紹介患者数 | 1,699人(紹介患者比率: 60%) |
入院患者数 | 140人 |
歯科処置室での日帰り手術件数 | 1,110件 |
中央手術室における手術件数 | 108件 |
全身麻酔 | 108件 |
術式 | 件数 (令和4年度) |
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顎骨嚢胞・腫瘍摘出術 | 36 |
埋伏歯抜歯術 | 33 |
顎矯正手術 (上下顎同時移動術) |
9 |
顎矯正手術(下顎骨形成術) | 11 |
抜釘術 | 10 |
下顎骨骨折整復手術 | 2 |
唾石摘出術 | 2 |
舌悪性腫瘍手術 | 2 |
頬粘膜悪性腫瘍手術 | 2 |
上顎骨悪性腫瘍手術 | 1 |