放射線療法は、手術療法や化学療法と並び、がん治療3本柱として集学的治療の一翼を担う有効な局所的がん治療法です。また身体への侵襲が少なく、高齢者や合併症を有する患者様に対しても適用でき、機能、臓器を温存できる優位性があります。癌性疼痛をはじめとした様々な苦痛を緩和する手段としても用いられています。
最新の高度な治療装置を安全に適切に運用できてこそ、安心の治療が実現します。体にやさしいがん治療の観点から、腫瘍のみに照射範囲を限局し、なるべく正常臓器の障害を低減するよう治療計画を心掛けています。関連各科と連携を保ちながら、放射線治療専門医、医学物理士、看護師、放射線治療専門放射線技師がチームを組み、それぞれ専門の立場で患者さんの治療およびケアを行います。
放射線治療科では、以下の放射線療法を行っています。
日本医学放射線学会専門医総合修錬機関、日本放射線腫瘍学会認定施設に指定されています。
がん病巣に対する、リニアック(直線加速器)による高エネルギーX線、電子線を用いた外照射の流れは、以下の通りです。まず各科より放射線治療依頼を受け、画像、その他検査所見を参考に、診察いたします。治療内容(治療効果、有害事象、経過観察等)は初診時に詳細に御説明いたします。治療準備として、CTやMRで得られた病巣画像を三次元治療計画用コンピュータに転送し、効率よく病巣に放射線を集中させる照射方法を採択します。疾患の種類や抗がん剤治療を併用する場合などに応じて適切な治療線量と治療期間を決定します。標準治療は平日(月曜日から金曜日まで)の週5日で、1日1回の照射です。治療期間は2週から8週間程度と疾患により異なります。多くのケースでは外来通院が可能です。照射時は痛みや熱感は感じません。しかし照射開始後の約2週間程度で放射線治療特有の有害事象が出現します。治療期間中は週1回の診察日をもうけ、治療効果や有害事象を観察し、治療終了後しばらくは経過観察をいたします。
2020年度リニアック更新により、放射線治療装置はバリアン社製のリニアック TrueBeamと治療計画システム Eclipseを導入致しました。
TrueBeam(トゥルービーム)は、定位放射線治療(SBRT)や強度変調放射線治療(IMRT)などを短時間かつ高精度に行うことができるX線照射装置です。これにより、周囲の正常組織に対する被ばくを極力抑えながら、病変の部分にのみ高線量の照射が可能となります。加えて呼吸をモニターするシステムが搭載されているため、呼吸性移動対策を講じた治療となります。これまでの装置に比べて高出力の照射であり、長い照射時間は必要ありません。身体を動かしてはいけない時間が短くなることで、患者さんの負担軽減につながります。さらに治療中に画像を撮影して位置を確認できるので、治療の精度を高く保つことが可能です。
放射性同位元素を用いたRI内用療法としては、去勢抵抗性前立腺癌の骨転移による有害事象に対する塩化ラジウム内用療法ならびに、バセドウ病の寛解目的ないし甲状腺癌に対する甲状腺全摘後の残存甲状腺破壊を目的とした放射性ヨード内用療法の、2種の核種(223Ra、131I)を用いた治療が可能で、適応症例に対応していきます。
かわべ てつや
河邊 哲也
平成7年 卒
役職 |
部長代行 |
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専門分野 |
放射線治療 |
資格 |
日本医学放射線学会放射線治療専門医 |
せのお さとし
妹尾 悟史
平成24年 卒
役職 |
非常勤医師 |
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たなか ひろのり
田中 宏典
令和4年 卒
役職 |
専攻医 |
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専門分野 |
放射線治療 |
2021年度の放射線治療の新患は363例です。そのうち高精度治療としては、頭部及び頭頚部IMRTが19例、胸部IMRTが21例、骨盤部IMRTが71例、肺腫瘍に対する定位放射線治療が4例となります。