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呼吸器外科

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ご挨拶

“ひとりひとりに向き合った医療”を

現代医療では驚くべきスピードで新たな治療が現れます。少し前の標準治療はあっという間に時代遅れとなってしまうことも少なくありません。

一方、実際の医療現場では、患者さんが抱える病気や外科治療への不安感はもちろんですが、個別の事情・背景(基礎疾患、個人の事情、家族背景)も考慮する必要があります。

私たちは患者さんと一緒に治療選択をする際に、情報量が多すぎて混乱する治療をわかりやすく説明するとともに個人の背景にも柔軟に対応する必要があります。最新の手術技術や知識・豊富な経験および当科の手術成績もご説明し、その時点で最善の治療、安心できる手術を一緒に考えて“個々にふさわしい治療”を選択してもらえるように努めています。

呼吸器外科専門医3人を含む4人の呼吸器外科医がチーム医療を掲げ、常に患者さんの病状を共有し治療を行っています。全てのスタッフが関わることで、より安心できる手術を提供し、他部門のサポートも利用して、“ひとりひとりに向き合った医療”を常に目指しています。

対象疾患と治療方針

1.外科治療
  • 胸部悪性腫瘍(肺癌、縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍、胸壁腫瘍、胸膜腫瘍)
  • 感染症(急性・慢性膿胸、肺膿瘍、肺・胸囲結核、肺真菌症、非定型抗酸菌症等)
  • 気胸(肺のう胞性疾患)
  • 胸部外傷(外傷性肋骨骨折、血気胸)
  • 全身型重症筋無力症
  • 手掌多汗症
2.気道インターベンション
  • 硬性・軟性気管支鏡下気管・気管支ステント留置
  • 気道レーザー治療
  • 気管支充填術(EWS
3.肺癌に対する術後補助療法
4.気管支鏡検査(超音波気管支鏡検査、術前Valmap検査含)
治療方針

呼吸器内科、放射線科、病理診断科と緊密に連携し、肺癌をはじめとする悪性呼吸器疾患の診断、外科治療を総合的に行っています。外科治療は安全かつ確実な手術を行い、術後合併症の発生を抑えることに特に留意しています。

術式

身体的負担の少ない完全胸腔鏡手術を基本術式とし、更に負担の少ない単孔式胸腔鏡手術や最新型機種ダビンチXiによるロボット支援胸腔鏡手術も行っており、進行肺癌に対する拡大手術も含めて、広い選択肢から術式を決めています。

緊急対応

悪性疾患だけではなく、気胸、膿胸、外傷といった急性疾患にも救急外来対応もしくは近隣病院からの紹介含めて十分に対応出来る体制を取っています。

臨床研究

当科は当院倫理委員会の承認を得た臨床研究、多施設共同研究を積極的に行っています。これらにより現行治療を随時見直し、エビデンスに基づいた最新の治療を取り入れるように努めています。

患者さんへ

当科は当院倫理委員会の承認を得た後、多施設共同研究を含む多数の臨床研究を行っています。呼吸器外科手術臨床データ利用のお願いこちら(PDFファイル)をご覧ください。

診療内容

2023年の全身麻酔手術件数は308例でした。主な疾患の症例数は肺悪性腫瘍手術162例(原発性肺癌135例、転移性肺腫瘍27例)、縦隔腫瘍16例、急性・慢性膿胸・肺感染症34例、気胸60例でした。早期癌には胸腔鏡下区域切除を、また進行癌には肺動脈、上大静脈、気管支形成を含むは開胸拡大手術も数多く行っています。大半を占める胸腔鏡手術では単孔式(4cm単一創)胸腔鏡やロボット(ダビンチXi)支援胸腔鏡、完全胸腔鏡(3ポート)手術を個々の症例に応じて使い分けています。(治療トピックスの項参照ください)

 

 

主な疾患別治療方針について簡単に記します。詳細に関しては遠慮なくご相談ください。

 

1.肺癌

治療方針は患者さんの意向を踏まえて、組織型・病期・病状を考慮し、呼吸器内科、放射線治療科と連携して適切な治療をお勧めするようにしています。

 

①手術方法(アプローチ);3か所のポートを用いた完全胸腔鏡下手術が原則ですが、更に低侵襲である単孔式胸腔鏡手術(4cm単一創)やロボット(ダビンチXi)支援胸腔鏡下手術を使い分けています。合併切除を伴う拡大手術に対しては開胸手術を行います。病状の進行度等を踏まえて最も勧められる手術を行います。

 

図1:単孔式胸腔鏡下肺癌手術

図2:ロボット支援胸腔鏡下肺癌手術

 

②早期肺癌:根治性と肺機能の温存の双方を考える必要があります。根治性が十分にある症例では、肺機能を温存するために積極的縮小手術である胸腔鏡下肺区域切除を行っています。これにより術後肺機能は十分に温存できます。その際、区域を特定しにくい場合には術前に該当する気管支に色素を注入して区域を同定する方法(Valmap法;図3)や術中にICG(インドシアニングリーン)色素を用いた同定法(4)を用いることでより確実に区域切除を行っています。

 

   

図3:valmap手術による病巣のマーキング    図4:術中ICG使用による肺区域同定

 

③進行肺癌:近年の薬物療法の開発に伴い、治療内容は急速に変わってきていますので、個々の患者さんによって勧めるべき治療内容は異なります。我々は呼吸器内科・放射線治療科と集学的カンファレンスを開催して、個々の症例を検討し、拡大手術や術前治療併用手術も多数行っています。

 

④術後補助療法:病理病期IB期以上の肺癌術後補助療法は当科で行います。

 

⑤再手術・高齢者手術:80歳以上のご高齢の方の手術や第2肺癌に対する再手術症例は年々増えていますが、85歳以上の方の手術も著明に増加しています。安全性・低侵襲性および術後の生活レベル維持を手術基準としていますので、ご高齢の方や再手術の方に対しても手術は十分に安心して受けていただける治療となっています。手術を提案するにあたっては十分な術前検査を行い、ご本人が納得され、またご家族にもご理解頂くようにして手術をお勧めしています。

 

2.縦隔腫瘍

大半の症例はロボット支援胸腔鏡手術(図5)を行っていますが、更に患者さんの負担の少ない単孔式胸腔鏡手術(4㎝創1カ所のみ)(6)も施行しており、血管形成を要する開胸による拡大手術も含めてより広い手術選択が可能となっています。重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術もロボット支援下に行っています。

 

図5:ロボット支援胸腔鏡下拡大胸腺摘出術

 

図6:単孔式剣状突起下胸腔鏡縦隔腫瘍手術

 

3.転移性肺腫瘍

最近は大腸癌や腎癌の肺転移などの転移性肺腫瘍に対するに複数回手術も増加していますが、区域切除も積極的に行い、安全に肺機能も温存しながら行っています。

4.感染症手術

慢性有漏性膿胸・急性膿胸に加え、肺・胸囲結核・非結核性抗酸菌症・肺アスペルギルス症といった感染症手術を年間30-40例程度行っています。難治性膿胸含め近隣病院からの相談例も多く、積極的に転院のうえ治療しています。以前は治療に難渋していた有漏性膿胸に対してはVAC(局所陰圧閉鎖)療法を併用し極めて良好な結果を得ています。

5.自然気胸

緊急例含め随時対応しています。特に近隣病院からの難治性気胸の相談例も多く、早々の転院対応をしています。再発予防目的でブラ切除部への胸膜被覆術を併せ施行し、再発率の低下を見ています(図7)。若年者の気胸手術の入院期間は通常術後2-3日です。高齢者に対する気胸手術の成績も極めて良好で安心して手術を受けていただけます。

図7:自然気胸手術(PGA被覆)

6.気道インターベンション

気管・気管支狭窄症例等に対して硬性気管支鏡や軟性気管支鏡下にシリコンステント、金属ステント挿入術やレーザー、アルゴンプラズマ焼灼術を行っており、呼吸困難などの自覚症状の改善、QOLの改善を図っています。難治性気胸に対する気管支充填術(EWS留置)も行っています。

7.胸部外傷

当院が地域の救急医療も担っていることから対応しています。多発肋骨骨折、外傷性血胸、気胸、肺挫傷などが入院治療の対象になります。大多数は胸腔ドレナージ、保存的治療で軽快しますが、時に緊急手術を行う事もあります。

8.手掌多汗症

胸腔鏡にて胸部交感神経焼灼術を行っています。術直後から著効し、入院は短期間(23)です。

治療トピックス

単孔式胸腔鏡手術(uniport VATS)とロボット支援胸腔鏡手術(RATS)について

以前は20-30㎝の側胸部切開による開胸術が一般でしたが、1990年代以後胸腔鏡手術が導入され、3ポートによる胸腔鏡手術により疼痛を大きく軽減することが可能となりました。しかし、それでも我々が現在行っている前向き観察研究では10-20%の患者さんは3か月後に慢性疼痛を自覚されています。

呼吸器外科領域の低侵襲手術は現在新しい時代に入っています。上記の3ポート胸腔鏡手術から単一の創のみで手術を行う単孔式胸腔鏡手術がアジアを中心に広がりを見せています。一方、ロボット支援胸腔鏡手術も北米を中心として広がり、20184月から本邦でも保険適応となりました。そのいずれも当科では行っています。

A.単孔式胸腔鏡手術(uniport VATS)

当院における単孔式胸腔鏡手術は2018年2月から縦隔腫瘍に対する剣状突起下アプローチによる単孔式手術に始まりました。これは肋間神経を損傷することのない剣状突起下(みぞおちのあたり)から、基本的には1つのポートを用いて縦隔腫瘍を切除する方法で、術後3日目にはほとんど疼痛が無くなり、多くの患者さんが鎮痛薬不要で退院されています。適応は限られますが非常に優れたアプローチです。

そして2018年12月から肺癌、転移性肺腫瘍に対して一つの創からアプローチする単孔式胸腔鏡下肺葉切除および区域切除を導入しています。従来のアプローチと比較し術後疼痛が少なく、早期退院が可能となっています。一つの創からのアプローチは安全性に懸念がありましたが、当院独自の工夫により、手術に関連する死亡ゼロ、出血などのトラブルによる開胸移行や多孔式胸腔鏡手術への移行ゼロ、赤血球輸血ゼロと安全な手術を提供することができております。また術後も肺瘻(肺からの空気の漏れ)の停止までの日数は平均で0.47日、中央値0日(0-9日)で、非常に良好な安全性が証明できています。

全国的にも早期に導入したことによって、当院にはすでに安全に行うためのノウハウの蓄積が進んでおり、標準的な手術であれば問題なく単孔式でも安全な手術を行えるようになっております。(図8)

図8:単孔式肺癌手術と前縦隔腫瘍手術

B.ロボット支援胸腔鏡手術(RATS)

一方、ロボット支援胸腔鏡手術も肺悪性腫瘍(肺癌、転移性肺腫瘍)、縦隔腫瘍に対して保険収載されたのに伴い、当院では20192月より開始しています。当初はダビンチSという旧タイプでしたが、20201月より最新型機種であるダビンチXiで手術を行っています。ロボット手術は掃除ロボットのような自動運転手術ではなく、ドローン操作のように資格を有する術者が行います。当科では4名のメンバーのうち、3名がロボット支援手術の執刀を出来る資格を有しており、また4名全員が助手としてロボットの操作を行う資格を有し、麻酔科医、看護師、臨床工学技士とも緊密な連携をとり万全に手術を行うことが出来る体制を整えています。また当院のダビンチXiは肺葉切除モデルを含め多数のプログラムを有するシミュレーターを併設しており術者の日々のトレーニングや修練医の教育に使用しています。

ロボット支援手術も低侵襲胸腔鏡手術ですが、単孔式と趣は異なります。手術創は1-3cm程度の創が3-5ヶ所で、同部から挿入した内視鏡、ロボットアームを用い、高精細強拡大可能な3D画像を使用し、膜、神経、小血管といった微細構造を確認しつつ(図9)、利き腕には無関係に人間の可動域を超えた関節を利用することで繊細な操作が可能で、低侵襲、安全性、根治性を両立させた手術を行うことが出来ます(図10)。当科では肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍に対してRATS手術を行っており、術後合併症は軽微で、良好な術後成績です。縦隔腫瘍に対してはその特性を生かすことができ有効な手術となっています。また肺悪性腫瘍に対しても従来の胸腔鏡を大きく凌駕する視野の充実性により、極めて良い視野で安全に低侵襲に手術が行うことができます。

単孔式とロボット手術は重複する術式が多いため、使い分けは慎重に判断していますが、縦隔腫瘍の場合であれば比較的単純な縦隔腫瘍は単孔式胸腔鏡で、やや複雑な縦隔腫瘍の場合にはロボット手術というように両者を使い分けています。肺癌に関しては病巣部位や想定される術式、難易度により使い分けています。

我々はより良い手術を提供するため、臨床研究を踏まえ年々新しい取り組みを行うことで、改良、改善を積み重ねています。御興味のある方は外来担当医に遠慮なくお尋ねください。

図9:RATS術中視野

図10:術中写真

  • 大政 貢

    おおまさ みつぐ

    大政 貢

    1992年卒

    役職

    副院長 兼 部長

    専門分野

    呼吸器外科全般(肺・縦隔・胸壁)

    資格

    京都大学医学部臨床教授

    呼吸器外科専門医

    日本呼吸器外科学会指導医・評議員

    日本胸部外科学会認定医・評議員

    日本外科学会専門医・指導医

    日本肺癌学会評議員

    日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医

    日本がん治療認定医機構認定医

    手術支援ロボットダヴィンチ術者認定資格

  • 本山 秀樹

    もとやま ひでき

    本山 秀樹

    2003年卒

    役職

    医長

    専門分野

    呼吸器外科全般(肺・縦隔・胸壁)

    資格

    呼吸器外科専門医

    日本呼吸器外科学会評議員

    日本外科学会専門医

    胸腔鏡安全技術認定医

    手術支援ロボットダヴィンチ術者認定資格

    日本内視鏡外科学会 技術認定取得(呼吸器外科領域)

    日本呼吸器外科学会認定ロボット支援手術プロクター

  • 中西 崇雄

    なかにし たかお

    中西 崇雄

    2004年卒

    役職

    医長

    専門分野

    呼吸器外科全般

    資格

    呼吸器外科専門医

    日本呼吸器外科学会評議員

    日本外科学会専門医

    日本がん治療認定医機構認定医

    胸腔鏡安全技術認定医

    手術支援ロボットダヴィンチ術者認定資格

    日本内視鏡外科学会 技術認定取得(呼吸器外科領域)

    日本呼吸器外科学会認定ロボット支援手術プロクター

  • 足立 泰志

    あだち たいし

    足立 泰志

    2019年卒

    役職

    医員

    専門分野

    呼吸器外科全般

診察室 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
603

足立

(13時〜)

604 本山 中西 大政

専攻医教育(学生・初期研修医対象)

一般に肺、縦隔、胸壁、胸部外傷の外科治療が呼吸器外科業務です。当科では、多岐にわたる手術~胸部外傷~気管支鏡検査~術後補助化学療法といったボーダー領域を含めた広範囲な呼吸器外科領域治療を行っています。肺癌・縦隔腫瘍・転移性肺腫瘍などの悪性腫瘍の手術のほか、気胸・嚢胞性肺疾患や結核・膿胸を含む感染症および胸部外傷手術など年間300例前後の全身麻酔手術例を行っています。

手術は胸腔鏡下手術が大半で、単孔式胸腔鏡手術、ロボット支援胸腔鏡手術も導入しており、患者さんの状況に応じて術式を選択可能にしています。また、集学的治療を要する悪性腫瘍に対しては放射線治療科、呼吸器内科と合同で治療方針を決め、気管支形成術や肺動脈、上大静脈再建術といった拡大手術も行います。

 

当科専攻医(後期研修医)は呼吸器外科専門医に必要な豊富な手術症例を執刀医・助手として担当することになります。手術以外では外科症例の気管支鏡検査(超音波内視鏡含)や気道インターベンションとして気管・気管支レーザー治療、ステント挿入、術後補助化学療法、胸部外傷も当科で担当していますので、ほとんどの呼吸器外科領域治療・検査を研修することになります。

 

当科は呼吸器外科専門医合同委員会認定修練基幹施設、日本呼吸器内視鏡学会認定施設認定を受けています。上記の広範囲な呼吸器外科領域治療・検査の指導および本人が希望する場合は主要全国学術学会、国際学会発表、和文・英文論文作成指導を行っており、呼吸器外科医を志す研修医・専攻医には最適の環境を提供できると考えています。当院で外科専門医を取得する場合には兵庫京大外科専門研修プログラムにて外科専門医や呼吸器外科専門医の取得の指導を行います。スタッフは、呼吸器外科学会指導医1名を含む呼吸器外科専門医3名を含む計4名です(部長大政貢、医長本山秀樹、医長中西崇雄、医員足立泰志)。

 

我々は良いチームワークで仕事が出来ていると自負しております。従来よりチーム制を取り入れていますので、平日夜・週末・休日は分担制としており、レジデントもスタッフも十分な休養をとるようにしています。

 

優秀な呼吸器外科医を育成することは我々の義務でもあります。手術・検査教育、動物臓器やモデルを用いた定期的なハンズオントレーニングや学術教育にわたる育成プログラムを持っており、経験豊富な呼吸器外科専門医・指導医による指導を行っています。呼吸器外科に興味を持たれている方や将来呼吸器外科医を目指す研修医を大歓迎しますので、関心のある方は神戸市立西神戸医療センター呼吸器外科部長大政貢もしくは総務課(代表078-997-2200)にご連絡いただければ、見学含め対応いたします。

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